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2004/09/21

天動説で、いいんじゃない?

 プロ野球論争華やかな今日この頃ですが、本日は学問教育ネタで。「小学生の4割は天動説」というニュースが流れております。

太陽と地球の関係の理解を二者択一で確かめたところ、「地球は太陽の周りを回っている」と正解を選んだ児童は56%にとどまり、42%は「太陽が地球の周りを回っている」と誤った方を選択した。
でもこれよりびっくりなのが
「人工衛星と同じように地球の周りを回っている天体は?」との問いに、月と回答した児童は39%で、他の選択肢の火星が27%、太陽が24%だった。
世間の論調は、こんな当たり前の問題を小学生が解けないという事を憂うものが多いようですが、☆logさんのひみつシリーズにてご指摘の通り、比べるデータ、つまり私たちが小さいころに何人の人が正解したかのデータが無いので、56%の正解が少ないかどうかわかりません。ただ、個人的には結構難しい問題だと思うのですが。なにしろ、朝日が昇ってから夕日が沈むまで毎日太陽を観察しても、絶対わからない問題ですし、むしろ地動説なんて不自然な現象でしょう。小学生の教科書に書いていないのなら、☆logさんおすすめのひみつシリーズを読むことが無い限り正解するのは無理だと思うのですがね。
 
 私は、この正解率が低いという問題は、小学生に教えない事が問題なのではなくて、テストに出ない知識は無駄な知識という現代では無意識のうちの常識が問題だと思っています。
 
 その意味するところのその1は、教えないもの以外は知ろうとしない。いや、余計な事を知ることは無駄に容量を食う事になるからむしろ知らない方がいいという考え方です。天動説地動説ならまだ学問っぽいけど、私が小さいころは、暇さえあれば軍艦図鑑を読みまくり、ほとんど暗記してしまっていたし、ウルトラ怪獣大百科みて、どの怪獣がどのウルトラマンの第何話に出てくるかまで知ってましたね(もちろん全て忘れましたが)。図鑑の類もいっぱい見てましたよ。こんなの受験戦争を勝ち抜くには全く無駄でしょう。でも、現代では、ちょっとした図鑑をみて太陽と地球の関係を知るという知識が、怪獣並みの知識に降格されてしまい、そして、そんな降格された知識を得る事は無駄な事になってしまったのでしょうか。
 
 そして、意味するところのその2は、与えられたものに疑問を感じない事、教科書に書いてある事は正しい事で、なぜ正しいかを考える事は無駄であるという考え方です。太陽の周りを地球が回っているといわれれば、それが当たり前だと思わなければならない。そこに疑問をはさむとテストで点がもらえないことになります。「地球は丸い」といわれても、教室にある地球儀を眺めながら、「南極の人はどうして下に(教室の床の方向)落ちないのだろう」と思ったのは私だけでしょうか。
 
 今日、とあるニュースで、宇宙飛行士の毛利衛さんが言ってました。「4割の子供が天動説?いいんじゃないですか。私も小さいころそう思ってましたよ。私は宇宙へ行きましたが、宇宙ってわからない事だらけですよ。」って。はなから正しい事であると思い込むことは必要ないという内容の事を、言われていたように思います。これ、私も全くの同感です。
 ガリレオかコペルニクスか知りませんが、その時代の子供たちが同じ質問で地動説が正しいと答えれば、(宗教的な意味は無いとしても)その時代の大人たちは「お前らあほか!」といったに違いありません。よく考えれば、現代の大人たちが、天動説を間違っているという事は、所詮教科書に書いてあったという程度のことが根拠であり、ある意味、ガリレオの時代の大人たちと同じレベルなのではないでしょうか。あらゆる可能性を持った子供たちに、ただ教えない事がいけないとする論調はちょっと違っていて、もっと疑問を持ってもらえる教育っていうのがいいんじゃないかなあと考えた次第です。

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コメント

この記事に関して面白いことが書いてあったのでもう一つ。
約半数の子供が、太陽の沈む方角を正しく理解していないそうで。
いいか・悪いかのレベルではなく、生活していく上での知恵というものも失われていっているのかもしれませんね。

投稿: ふぁんた | 2004/09/22 10:32

あう、上のコメントの内容間違ってました。「約半数の子供が」→「約三割の子供が」です。

投稿: ふぁんた | 2004/09/22 17:59

☆logの☆です。トラックバックとコメントをいただきありがとうございます。
彰の介さんの記事を幾つか読みましたが、物事への関心の抱き方と適度な理屈っぽさが僕と似ていると感じました。
今日の「クローズアップ現代」では、学力格差の拡大をくい止めるために奮闘する教育現場が映されていました。
親が自営の塾をしていたので、教育問題には微妙なスタンスの僕なのですが、学力とは何なのか。この年齢になってもよく考えます。
端的に言えば、学んだ結果の力ではなくて、どんなときでも、幾つになっても学ぼうとする力が「学力」ではないのか、と。

投稿: | 2004/09/22 20:24

ふぁんた様、☆さま、コメントありがとうございます。
確かに、生活の中の知恵なんてどんどんなくなっているでしょうね。これ、便利さやらの変わりにあほになってるってことなんですかね。いやー、考えさせられます。
あと、☆さま、「適度な理屈っぽさが僕と似ている」とおしゃってますが、私その昔、占い師に「いやーこの男は相当な偏屈だね」といわれました。そんな男に似ていると言わないほうがいいのでは・・、まあ、類は友を呼ぶとは言いますが・・。

投稿: 彰の介 | 2004/09/22 23:32

彰の介さん,はじめまして。かねごんと申します。
「にわか教育パパの世迷い言」さんのページから飛んできました。それで,“あとだしトラックバック”させていただきました。
一般的にですが,“ムダなこと”ってなおざりにされているように感じますね。まぁトリビアなんて番組は流行りましたが,あれは話しのネタになる分,ムダ知識ではないわけですよね(^^;)
それから天動説ですが,毛利さんのおっしゃっていること,私もそのとおりだと思います。むしろ,天がどう動いているのかをきちんと観察できることの方が大事かと思います。
東だ西だなんて,どうせ人の決めた方角なんですから。
ただ,生活していく上で必要なことはもちろんだと思いますけれど。
このたびの過剰反応は,やや違和感が残るところです。

投稿: かねごん | 2004/09/30 20:28

かねごん様、コメントありがとうございます。
毛利さんという実際宇宙へ行った人が、宇宙がわからないと言われたことにとても感動したところです。普通わからなくてもわかったように表現するのが科学ですから。
 子供達には、地動説なんて、そんな簡単に、わかって欲しくない、わかったと思って欲しくない、むしろけちをつけて欲しいぐらいに思います。ましてや、大人が縛るべきでない、そう思ったしだいです。

投稿: 彰の介 | 2004/09/30 21:20

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