医療現場と携帯電話
あざらしサラダさんが「ブロガー新聞」(第3号)の「今週のトラックバックテーマ」は・・・ってことで「携帯電話」をあげていらっしゃいます。本当はあまり気にもならなかったのですが、よくよく考えてみると、私彰の介、”やぶ”とはいえ、医療関係者ということを忘れていました。そう、病院にいくと必ず「院内では医療機器やペースメーカーに影響を及ぼす可能性がありますので、携帯電話の電源をお切りください」と書いてあるんですね。
実際、どれ位の患者さんたちが電源を切ってるかどうかはわかりませんが、私の経験として、外来中や、家族への説明中に患者さんや家族の携帯の着信が「チンチロリ~ン、チンチロリ~ン」(うむむ、いまどきチンチロリンはないかも・・・)と鳴ることは、決して皆無ではありません。よくあるとは言いませんが、チョコチョコあるといえばあります。患者さんの容態が悪くなって、家族親戚で連絡取り合ってるときなんかはよくありますね。しかし、私の経験上、病院内の携帯禁止区域内のロビーなどで、大きな声で携帯で通話し続けている人は見たことありません。また、外来で患者さんの診察中に「チンチロリ~ン、チンチロリ~ン」(だからいまどきないでしょ・・・)と鳴ったこともありますが、当然、その患者さんは直ぐ切りました。中には会話を始める人もいましたが、「今病院だから切るよ、ガチャ」という人でした。まあ、当たり前といえば当たり前ですが、病院内では電源を切っているかはともかく、いわゆるマナーはある程度徹底されているようです。
ところで、この根拠になってる医療機器やペースメーカーに影響を及ぼす可能性ってのはどうなんでしょう。あざらしさんとこから電波の医用機器等への影響に関する調査結果を引っ張らせていただきました。要するに、医療機器に近づきすぎると、誤作動の可能性があるってことですよね。皆さんご存知かどうかわかりませんが、点滴をするとき、輸液ポンプっていうのを使う場合があります。正確に点滴をある一定量、一定のペースで入れるために使う機械です。手動では誤差が大きすぎますから、大事な薬を使う場合等はこういった機械を使うわけです。シリンジポンプっていう、もっと正確に薬を入れるための機械もあります。一時間当たり0.1ml位の単位で入れる場合に使います。要するにこれらの機器はその性格上極めてデリケートです。一時間当たり1ml、点滴を通して薬を入れるという設定だったのに、0.5mlしか入らなかったら、極端な話その患者さんは死んでしまうかもしれません。たった、数mlです。すずめの涙ほどの誤差が許されません。
現実には、携帯電話によるこういった医療機器の誤作動で問題が起きたという報告が無いところを見ると、携帯電話が誤作動を起す確率は極めて低いのでしょう。しかし、私はそのデリケートさをよく知ってますから、携帯電話が誤作動を起こす可能性が0%でないのであれば、危険を冒してまで携帯の電源を入れておく勇気はありません。患者を自分の家族に置き換えてみれば、そんなことぐらいで死んでもらっては困るし、また、自分が加害者になりたくもありません。だから、マナーの面も含んでいるとはいえ、病院内での携帯電源offについて、おかしいとは思いません。まあ、現実にほとんどの人はルールを守ってくれていると思います。病院で診察を受ける時間、あるいは誰かのお見舞いに行く時間、携帯の電源を入れておかないと死ぬわけでもないし、留守電やら、メールの確認ぐらいは後からでもできるんですから。
一方、「電車内の人工ペースメーカーに対する携帯電話の影響」がいろんなブログで話題になっていますが、ペースメーカーにはほとんど影響が無いのに携帯の使用制限をいうのはおかしいというような論調が多いのに驚きました。安全の問題とマナーの問題の混同とか、ペースメーカー患者に恐怖をあおるだけとか、目くじらを立て、マナーを押し付けるのはどうかとか、そういう意見が多いんですね。そういう、意見の方が多いとすると、私が上で書いたような病院内のルールなんてなくした方がいいという方も多いのでしょうか。私は、電車内も病院内も同じだと思っています。確かに、さほど影響は無いのに、ペースメーカー患者に恐怖をあおるだけなのかもしれませんが、でも、避難場所としての優先席付近くらいは確保してあげてもいいと思います。逆にそんなに目くじらを立ててまで、携帯電話の電源を入れておくことに固執する意味がわかりません。何万分の一か、何千万分の一の確率かわかりませんが、私は(あくまで私はですが)、ペースメーカーの誤作動による事故の加害者にはなりたくありません。正直、多くの方の、携帯なんかでペースメーカーに誤作動なんておこりっこないという自信には、感服するばかりです。
どこかで、議論はし尽くされているのかもしれませんが、私見を述べてみました。ご批判甘んじて受けます。
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コメント
こんにちは。
はじめまして「この幸福な世界」というタイトルのブログを書いているThisHappyWorldと申しマス。
私も同感です。
「ペースメーカーにはほとんど影響が無いのに携帯の使用制限をいうのはおかしいというような論調が多いのに驚きました」というのは私も同感です。ほんとに「携帯なんかでペースメーカーに誤作動なんておこりっこないという」ムードには辟易します。
私は"携帯がペースメーカーに誤作動を引き起こすのかどうか"知りませんが、そういうことがあるということを今のところ鵜呑みにしています。誤作動を起こすかもしれないという研究成果を否定する根拠も持ちあわせていませんし、万が一の可能性だって考えると、他人を不快にしたり傷つけたり最悪生命の危険を及ぼすような真似をしてもかまわないというのは、ちょっとおかしいとおもいます。そういった事故がたとえ可能性が低いとしても、可能な限り回避するようにするのが妥当と考えています。
携帯電話がとても便利で多くの人が利用するような状況になってますが、便利なツールと恐ろしいツールという両面を考えると、これからの世の中を生きてゆく上で必要なサバイバル・ナイフのようなものと私は考えています。(拙ブログでも書いてますが)
投稿: ThisHappyWorld | 2004/10/20 10:43
>一方、「電車内の人工ペースメーカーに対する携帯電話の影響」がいろんなブログで話題になっていますが、ペースメーカーにはほとんど影響が無いのに携帯の使用制限をいうのはおかしいというような論調が多いのに驚きました。安全の問題とマナーの問題の混同とか、ペースメーカー患者に恐怖をあおるだけとか、目くじらを立て、マナーを押し付けるのはどうかとか、そういう意見が多いんですね。
・・・そうなんですか!!いろんなブログではそんなになっているとは知りませんでした。
確かに、現在使用されている人工心臓ペースメーカーや植えこみ型除細動器の殆どは、「装着部位から22センチ程度以上離すこと」(つまり植えこみを受けた本人が、植え込まれた胸部と反対側の耳で携帯電話を使って大丈夫)であり、今現在植えこみに使用されている機種では、もっと近くても大丈夫とされています。しかし、人工心臓ペースメーカーは、患者さんによってはかなり電池が長持ちして、未だに十数年前に植え込まれたものを使用されている方もあり、そういう機種では、どのくらいが安全かは、確実ではなく、いのちを支える重要な機械であるだけに、なるたけ安全な環境を社会として整えることは、必然のことと考えます。
>そういった事故がたとえ可能性が低いとしても、可能な限り回避するようにするのが妥当と考えています。
本当にそうですよね。
彰の介様、ThisHappyWorld様に全く同感です。
投稿: mia | 2004/10/20 20:59
ThisHappyWorld様、mia様、コメントありがとうございます。実は以前「電波の専門家」なる方が、電車内の優先席で携帯通話をしている人に注意をしたら逆ギレされたという事件がありました。とあるブログで、この注意した専門家をこれでもかとこき下ろして、注意する方が悪いという話になってるのをみてびっくりしたことがありました。現場を見ていないので、その専門家の注意の仕方に問題があったかもしれません。しかし、だめだといわれている場所で通話し、しかも逆ギレする男を、擁護する理由は何もありません。そのブログに一言コメントしてやろうかと思いましたが、仕返しというか逆ギレが怖くてコメントできませんでした(笑)。勘違いされるといけないのでもう一度書きます。私がそのブログでびっくりしたのは、専門家こき下ろしのことではありません。逆ギレした男に対して何も非難していないこと、むしろ擁護する雰囲気があったことです。心強いお仲間を得たので(笑)、ここに、コメントさせていただきました。
投稿: 彰の介 | 2004/10/20 23:16
ネットを休んでいたので、遅コメになってしまいましたが、
私は、過換気症候群です。発作を誘引しそうなシチュエーションを避けて生活しています。でも、心配事をかかえると、いつもは発作を起こさないようなことで発作が出ます。そして、「発作を起こすかもしれない」と思い始めると、さらに起こしやすくなります。
そうなると、お風呂に入るとき、ドアを閉められません。
私は、誘引する事柄がはっきりしているだけ、まだましです。
院内無線と携帯電話を混同して文句言っている人の意見を読んだこともあります…。
そういう人たちは、もしかしたら「携帯電話依存症」なのでしょうか?切ると苦しくなるのでしょうか?だとしたら、気の毒だと思いますけど…。
投稿: わに庭 | 2004/10/22 13:09
わに庭様、コメントありがとうございます。
過換気症候群ですか。私は救急等で何十人も過換気の方を診ていますが、残念ながら、わに庭さんの日常のような苦労を考えておらず恥ずかしいばかりです。
そんな具合ですから、携帯依存症の方がいらっしゃったら、体験談をぜひ教えてください・・。
投稿: 彰の介 | 2004/10/22 23:02
誤解をまねくコメですいません。
私は、電車での携帯は制限すべき、と、思っているんですよ。
たとえ影響がないとしても、ペースメーカー等を使っている人が近くで携帯を使われたら、その圧迫感だけで気分が悪くなるかもしれないのに、ってのが、抜けてました。
「携帯依存症」ってのは、皮肉です。
だけど、どこでもモバイルせずにはいられない患者さんがいることを考えると、可能性はあるな、と、思ってますが。
でも、仮にそういう患者だとしても…優先席近くでなんて、やりませんよ。なるべく迷惑かけないように、混雑時の通院をさけたり、交通手段を選んだりしてます。
だから、「携帯自由に使わせろ」ってのは、結局ワガママなんだと思います。
投稿: わに庭 | 2004/10/23 18:34
わに庭様、再コメントありがとうございます。
わに庭様のコメントの意味はよく理解していましたよ。私のコメントの後半部分、ちょっとふくんで書いてしまいました。「教えてください・・。」の「・・」にちょっといやみを入れたつもりだったのです(苦笑)。すみませんでした。
今回されたコメントの内容も全く同感です。私も敢えて電源を入れていないといけない(優先席付近だけの話なんですが)理由がわからないんです。優先席から離れていればいい訳ですから・・。
そんなことで、貴重なご意見ありがとうございました。また何かあればコメントいただけたらと思います。
投稿: 彰の介 | 2004/10/23 19:46
彰の介さん、こんばんは。
「ブロガー新聞」「一日編集長」のあざらしサラダです。
携帯電話の「問題提起」についての今後の進め方について、先ほどトラックバックさせて頂きました。
何の事前連絡もなく、いきなりお名前をあげた非礼をお許し下さい。
TB記事に書きましたが、携帯電話の問題を少しでも良くしようと思ったら、皆さんのご協力がなければ極めて困難だと思っています。
勝手言って誠に申し訳ありませんが、よければご協力願えないでしょうか。
投稿: あざらしサラダ | 2004/10/26 19:16
あざらし様、どうもです。
あざらし様のとこにもコメントしましたが、とりあえず、情報収集した上で少しずつ問題を絞り、こちらのブログで記事にしていきます。
コメントで提示した問題点が無理なら、また再コメントお願いします。
投稿: 彰の介 | 2004/10/26 23:06
彰の介さん、どうもありがとうございます。ご協力に感謝します
前回の記事にも書きましたが、今回の「問題提起」は決して「何から何まで規制せよ」という主旨ではなく、「どういう場合にどのような規制(対策)が必要なのか」を皆さんに問題意識をもって頂きたいと思って提起した「トリガー」であって、はじめから「法規制ありき」ではありません。
彰の介さんの記事及びコメントを読ませて頂きましたが、これまで述べられていた彰の介さんの視点でまとめて頂いて結構です。
どうか、よろしくお願いします。
追伸:
メールアドレスも書きましたので、何かあればメールで連絡して頂いても結構です。
投稿: あざらしサラダ | 2004/10/26 23:48
彰の介さん、はじめまして。
興味深く拝読させていただきました。
今回の件に関して、疑問を感じていたことを二つばかり。
まず、この種の論争で不思議なのは、ペースメーカー使用者にとって問題があるのは、果して携帯電話だけなのか?ということです。
携帯電話の発する電磁波が、ペースメーカーに影響を与える(可能性がある)というのならば、電磁波を発するとされるその他の家電製品(例えば電気カミソリ、電磁調理器、電子レンジ、掃除機など)なども、ペースメーカー使用者の生活環境上からは問題視されても不思議ではないはずですが、なぜかその方面で大きな論争になったという話は寡聞にして聞いたことがありません。
それから携帯電話の取説に関して。
取説では、ペースメーカー使用者に対して携帯電話の使用する時の注意を促す記述はあっても、ペースメーカー使用者が携帯電話の使用を禁止するということは無いですし、そうした法律を作れ、という動きも聞いた事がありません。ならば、ペースメーカー使用者で携帯電話を使用しているという人の話を聞く機会が与えられてもおかしくないと思いますが…タブー視されていたりするのでしょうか?
いずれにせよ、こうした問題を論ずる際には、当のペースメーカー使用者の声をくみ上げていく姿勢も必要なように思えるのですが、いかがでしょうか。
投稿: たがや | 2004/10/27 00:23
たがや様コメントありがとうございます。
私も携帯以外の電波について、その安全性については問題にすべきだと思っています。しかし、議論の仕方として、携帯以外の電波を問題にしないのはおかしいと言うのを、携帯は安全だという結論に摩り替えておられる方を散見します。これはおかしいですよね?。
あと、ペースメーカー利用者の意見ですが、最も大事なことだと思います。トラバの中に、家族が利用者と言う方がいらっしゃいました。多くの方の意見を聞いてみたいと思いますが、どうしましょう?
あざらし様、そういうことで、少しづつ動いてみます。期待せず、お待ちください(苦笑)。
投稿: 彰の介 | 2004/10/27 03:53