無駄論的血液型論争2
今回は、血液型論争の2回目です。前々前回無駄論的血液型論争で、最近流行の血液型による性格分類について、少しほざいてみました。年末にも、とあるテレビ番組で血液型大会が繰り広げられていました。なかなか面白い番組ではあったのですが、最後(心理学会の?)学者の方がおかしなことを言っていたので、そこに文句をつけたいと思います。
前の記事から書いていることですが、この血液型による性格分類番組は、心理学会などから批判を浴びています。私も以前の番組はちょっとやりすぎだと感じていました。例えば幼稚園児にある場面を設定し様子を観察し、血液型による差が出るかどうか見るという試みがあります。例えばA型の子供2人に買い物をさせるとどうなるかなんていうものです。しかし、たった2人の実験でA型を代表させるのにはそもそも無理があります。せめて、10組位の子供にやらせて、同じ傾向だったといわなければ、説得力がありません。その辺り、いろんな子供にやらせているのか、その組だけなのか、要するに分母が全くわかりません。いやもしかすると、何組かの子供にやらせて、元々考えていたその血液型らしい行動をとった組だけを放送に使っているのではないかという”やらせ”の疑惑さえ考えていました。また、意図しない結果になり、放送されなかったものもたくさんあるのではないでしょうか。ましてやその程度のいい加減な実験で、この血液型はこういう傾向があると決め付けることが多く、やはり、いきすぎた番組構成といわざるを得なかったと思います。
その点、最近の番組は、そんな批判を受けて、実験ごとに、この実験だけの結果ですとか、あくまで~さんの意見ですとか、性格を規定するものではありませんとか、注釈をつけ結論あり気ではないことを強調しています。私としては、そこに全くの”やらせ”がないのであれば、血液型を面白おかしく考えるというバラエティーとして別に問題はないだろうという考え方です。まあ、正直言うと、私の所属するA型において、社交性を持ち合わせているのは圧倒的にAAでは無く、AO型が多いのでは?等と考えているやぶ医者の私です(笑)。そんな感じで、血液型と性格にはある程度の傾向があると感じている私ですから、行き過ぎがなく、お遊び程度であれば、こういった番組を批判する気はもともとないわけです。しかし、根拠を問われれば何も答えられません。私以外でも科学的根拠を答えられる人はいないでしょう。無駄論的血液型論争で書いたように、血液型と性格の関係を根拠ある形で結論付けるには、大規模な血液型別の性格調査を行い統計学的に見るしか方法はないように思っていました。
実は、この大規模調査が、その年末の血液型番組で、ある学者の監修で行われていたので大変興味深く見ていました。その調査では総数750名程というまずまず信頼できる数で調べられていました。信頼できる性格判断テストであるクロニンジャーテスト(このリンクは1月31日までの限定公開だそうです)なるものを使い、慎重さ、好奇心、人付き合いを数値化し、そのパターンを血液型に見てみるというものです。そして、その大規模調査の結果、その監修した学者は「血液型により、平均値に関係性が認められた」というのです。これは大変興味深い結果で、おそらく血液型と性格の関係を示した最初の報告でしょう。ところが、この学者のこの後の言葉がいただけません。それはおそらく心理学会の意向を反映したものなのでしょう。「平均すれば関係が認められたのですが、一人一人を見ていくとばらつきがあり、個人差が非常にあります。」「最期に言いたいことは、心理学会では血液型と性格には関連がないというのが定説です。」とやったのです。これは明らかにおかしな発言です。この学者の言うとおり、個人個人ではこの性格テストの結果にばらつきがあったでしょう。そのばらつきの中から、一定の方向性を見るのが統計学的な手法です。例えば、A町とB町の小学生に算数のテストを行いそれぞれ平均点が70点と80点だったとします。この結果から、B町の小学生の方が頭がいいと結論していいかという問題です。この問題に対して、「それぞれの町の小学生に0点の子もいれば100点の子もいて、ばらつきがあるから、どちらが頭がいいなどとはいえない」なんていうのは答えになりません。あくまで統計学によって、A町とB町の小学生が同じ頭脳を持つ集団と考えていいかの確率を計算するのです。その確率が十分に低ければ、同じ集団とは考えにくいと考えられ、(有意差があるといいます)B町の小学生の方が頭がいいということになります。逆にその確率がそれほど低くなければ、平均値に差はあったが(B町の方が頭がいい傾向は見られたが)、統計学的には差はなかったという結論になります。今回の血液型性格調査において、この統計学的手法の結果は明らかにされていませんが、「血液型によって平均値に関係性があった」ということは、おそらく統計学的有意差が認められたと考えられます。なぜなら、心理学会としては血液型と性格には関連がないということを言いたかったのでしょうから、有意差がないという結果であれば正々堂々と「血液型による性格の差はありません」とはっきり結論づけることができたはずだからです。そう結論づけることができなかったところを見ると、意に反して、有意差がでてしまったと推測できるわけです。
つまり、今回の調査からは、「血液型と性格は関係がある」という結果であったのに、それをごまかすために、個人差を持ち出したり、きめ付けで差別をするのはよくないなどといって、うやむやにし、「血液型と性格には関係がない」という学会のご意向を守ったのではないかというのが私の推測です。これでは、むしろテレビ番組の方ではなく、学会の方が結論ありきなのでは?と思ってしまいます。もちろんこの調査だけでは結論は出ません。ぜひ、学会の方には、結論ありきではなく、科学的な手法の結果を尊重し、更なる大規模調査や、別の角度から見た血液型と性格の調査をしていただきたいものだと思います。
まあ、私は、血液型によるある程度の性格の差があるという結論ありきなんですが・・・・・ね。
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コメント
おはようございます。
典型的?オー型人のでめです。
正月のある番組で、オー型は、
もともとは、0(ゼロ)型という呼び名だったが、
誰かが誤って呼んだのが定着した結果だということを、クイズにしてました。
独擅場は、本来「どくせんじょう」と読むらしいのですが、
現在は「どくだんじょう」と読まれることが多いですよね。
直接、この記事とは関係ないコメントですが、
明らかに誤りでも、月日がたって浸透してしまえば、
むしろ正しいこととして通用してしまう。
これが面白いといえば面白いのですが。
投稿: でめ | 2005/01/06 08:38
この学者は有意差は出たけれども,原因は血液でないと言いたいのだと思います.ちなみに学力差は引越しなどで集団の移動が可能なので例として的確ではないように思いました.
投稿: 通りすがりのA型 | 2005/01/06 17:41
でめ様、通りすがり様、コメントありがとうございます。
今日の毎日新聞にも血液型の話題が載ってました。ゼロ型のことも書いてありましたが、私は全く知りませんでした。独壇場のことも全く知識にありませんでした。少し賢くなったかな?。
あと、もし、血液型と性格に関連があるとすれば、ある共通の遺伝子の全く違う表現型としての性格と血液型でないかと思います。ですから「性格の差は血液が原因ではない」と私も思います。しかし、それが言いたかったのであれば、この調査は、何のためにされたんでしょうか?。
投稿: 彰の介 | 2005/01/06 21:10
血液型占いのおかげで、A型の人はA型らしく、B型の人はB型らしくなるのではないでしょうか。この占いのミソは、日本人の少数派であるB型とAB型を、変人呼ばわりできる点にあると思います。
投稿: NIL | 2005/01/07 22:29
NIL様、コメントありがとうございます。
これは、こういう記事を書くこと自体へのご批判と言うことでしょうか。
まあ、血液型についてはこれ位にしておきます。ご不快な方がおられましたら申し訳ありませんでした。
投稿: 彰の介 | 2005/01/08 09:12
ここUCLAで免疫学を専攻している日本人学生の知り合いから聞いた話ですが、無関係なバイアスを排除して意味のある相関関係を抽出することのほうが問題解決よりも難しいのでは?とのことでした。血液型と性格の関係にもあてはまるんでしょうね。ご紹介されているテストのサイトはタイトルからして先入観が影響しそうです。最後に「あなたの血液型は?」とやらないと(笑)。あ、ごめんなさい。釈迦に説法ですね。
投稿: toshi | 2005/01/08 13:55
toshi様、コメントありがとうございます。
実は、ご指摘はむしろ以前から私が疑問に思っていたことでして・・・、そう、思いつつ、今回の記事は確定的に書いたわけで、自己矛盾にも程があったりして・・・。
というのは、薬の効き目なども、統計学的手法で、効果があると判定されて売り出されるんですが、これが実はかなり胡散臭いんです。
とはいえ、あくまで傾向ですから、ええとですかね?・・、ダメ?。
投稿: 彰の介 | 2005/01/09 22:00
血液型性格関連説に有用性は見出せません.一方,少数派のB,AB型はいじめやいやがらせ,差別されて社会問題に発展しています.
先生なら関連した心理学論文を入手できる筈?
Webでは長谷川先生の
http://www.geocities.jp/hasep_diary/bloodtype/index.html
をご覧になったほうが良いでしょう.
投稿: なかざわ | 2005/03/05 21:34
なかざわ様、コメントありがとうございます。
私は、行き過ぎた血液型番組に関しては問題があったと思っています。そういった番組を根拠にしたいじめに関しても問題でしょう。
私の文章がやや決め付け的なことも否定しません。しかし、これは無駄論なのです。血液型と性格に関して「有用性」なんて一言も触れていません。科学として捉えるのであれば、「タブー視しないこと」というのが無駄論的な視点です。
投稿: 彰の介 | 2005/03/05 23:29
血液型性格関連説について心理学界はタブー視しておりませんが?
無駄論(造語?)にもmedia literacyが必要かと存じます.
投稿: なかざわ | 2005/03/06 14:01