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2005/01/30

NHK番組改変問題(イデオロギー論、私見)

 なんだかんだありましたが、なんか、うやむやなうちに落ち着きつつあるように感じられるNHK番組改変問題です。まだ、これから波乱があるといけないので、このあたりで小まとめをしておこうと思います。
 もしかすると今回の問題、実は登場人物のうち、誰も嘘はついていないかもしれないということに気付きました。誰も嘘をついていないというのはどういうことかというと・・・、まずは涙ながらに政治的圧力を受けたと話したプロデューサー。自分が作ろうとした番組をぎりぎりまで削られ直されされたわけですから、きっと政治的圧力を感じたのでしょう。政治的圧力を感じたんだから仕方がない、圧力を感じたこと自体は別に嘘ではないでしょう。さて、そんな圧力はなかったというNHKの上司、この方達の話によれば、政治家の方々にあらかじめ番組内容について説明するのは通常業務の範囲だそうなので、政治家から「公正中立に」と言われ、それを部下に実行させることに関して政治的圧力という認識はなかったのでしょう。さてさて、政治的圧力をかけたという二人の政治家ですが、この方々も同様のことが言えそうです。別に番組についてご機嫌伺いに来るのは通常業務とのことですし、番組に対して意見することもおそらく通常のことなんでしょうから、圧力という認識はやっぱりなかったんでしょう。今更圧力と言われても・・・って感じでしょうか。そして、最初に報道した朝日新聞ですが、ここは肝心な証拠を公にしていませんから、世間では捏造報道とまで言われています。この証拠を出さないということで、大幅に減点ですし、結論ありきの取材があったことはおそらく間違いないでしょうから、捏造といわれても甘んじて受けなくてはならないでしょう。しかし、私見としては、当の番組プロデューサーが圧力を感じているんですから、そのことに対する問題提起という意味においては、陰謀とか捏造とまでは言い切れないのでは?という意見です。つまり、圧力をかけたつもりのない人から見れば、捏造でしょうが、圧力を受けたと感じている人から見れば決して捏造とはいえない、要するに問題提起というわけです。朝日新聞の報道に点数をつければ30点程度ですが、0点ではないでしょう。結局のところ、政治的圧力というものの定義がそれぞれ違うわけですから、いつまで経っても堂々巡りするのは当たり前と言えば当たり前かもしれません。
 今回、問題を複雑にしているのが、番組内容がイデオロギー的な問題であり、読売新聞の様に、番組内容がおかしいのだから、改変しても当然とする意見があることです(新たなNHK問題(読売の社説))。私は、もう一度この問題について、つまりこのイデオロギー的な部分をよ~く考えてみました。すると、確かに人間たるもの、ましてや政治家たるもの、ことイデオロギー論に関して、自分の意見とかけ離れた意見が出された場合、ついつい一言申し上げたくなるのは当たり前です。それはなぜかと言えば、誰しも自分のイデオロギー論こそ真の中立(真に正しい考え方)だと信じているからです。だから、安倍さんが、あの番組に対して「公正中立に」と忠告したこともよく理解できます。よく理解できるのですが、しかし、安倍さんの言う公正中立は安倍さんのイデオロギーに基づく公正中立であって、真の公正中立かどうかは誰も(神様しか)判断できません。例えば、右よりの番組が計画されたとき、安倍さんが、「もっと左の意見も入れるように」などと忠告することはありえないわけです(笑)。個人のイデオロギーに基づく公正中立が、真の公正中立でないかもしれないというのはそういうことです。極左は左端が、極右は右端が世の中の中心と考えているわけですから。ただし、NHKが政治から完全に独立していれば、公正中立かどうかに関係なく、各個人が一意見を言うことなど本来全く問題ないはずです。しかし、今回、NHKが政権与党に事前に番組内容を説明することが、通常のことだと言うのですから、これは問題です。つまり、「政権与党のイデオロギー=NHKの番組の公正中立」というのを認めてしまうことになります。例えば、安倍さんと180度イデオロギーの違う人たちが政権与党になったとします。この人たちが、NHKの番組に対して、自分たちのイデオロギーを基に「公正中立な報道をしろ」とNHKに忠告したとしたら、きっと安倍さんはその行為を「政治的圧力」と感じるに違いありません。しかし、自分のした行為は公正中立にといったまでで、圧力ではない・・・、と思っているわけで所詮イデオロギー論とはそんなものなのでしょう。私は、上の理由から、制度的にNHKが政権与党に近しくなるのが避けられないのであれば(それはそれで問題ですが)、余計に今回のような、放送前の番組への忠告は慎重であるべきだと考えます。それは、議論を相当にオープンにしないと政治的圧力と、とられてしまうからです。また、よくよく考えてみれば今回の番組内容がちょっとおかしいのではないか?と今現実に、読売の問題提起のように議論できているわけですから(いろんな意見を見る限り、あの番組内容を鵜呑みにし感化された人を見ていないのですが・・・)、あえて、放送前の公正中立との忠告は必要だったんでしょうか。そう考えると、公正中立が目的というよりは、自分の意見と合わないことは放送するな!とも取られかねないわけで、さらにさらに、慎重でなくてはならないと私は考えます。
 今回もまとまりのない私の記事をお読みいただきありがとうございました。ご批判甘んじてお受けいたします。

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コメント

でも、しかし日本の政治家で安倍さんよりも右よりで過激な政治家は居ないのに、
自分の周りを見渡してみて、自分を中立になんて感じるのかなぁ・・・。と少し思いました。
他人が居てこそ、自分が居るわけなんだし。

投稿: shuichi | 2005/01/30 12:45

shuichi様、コメントありがとうございます。
私は、安倍さんが自分自身の考え方について偏っているなんて思っていないと思いますよ。右という自覚はあるかもしれませんが、自分のスタンスこそ正しいと思っているでしょう。それは、みんな同じじゃないでしょうか。どうでしょう。

投稿: 彰の介 | 2005/01/30 21:53

あのー…ご存知かとは思うのですが、いちおう安部晋三氏について言っておくと、彼の父親は山口県出身の安部晋太郎(故外相)ですよね。そんで母親は岸信介の娘です。つまり安部晋三は岸の孫です。
岸信介は戦前には、ファミリーの松岡洋右&鮎川義助や、関東軍の東条英機と組んで、満州国支配のトップでした。戦中にも東条とのコンビで総動員体制を主導。それが戦後には実弟・佐藤栄作とともに自民党を仕切ったわけです。
そもそも明治維新以来、日本政府と陸軍は長州閥によって独占され、歴代の朝鮮総督・台湾統監は全員長州人でした。満州についても、言ったとおり、松岡=岸=鮎川の長州ファミリーが牛耳っていた。戦後はその長州閥が、自民党に形を変えているというわけです(ちなみに鮎川財閥は現日産)。
以上の背景を頭に入れれば、岸の孫である安部晋三氏が、戦前軍国主義の正当化を叫ぶのは無理もない。ご承知かも知れませんが、いちおうの蛇足までに。

投稿: 弓木 | 2005/01/31 00:59

弓木様、コメントありがとうございます。
安倍さんは、傍から見ればご指摘の通り、右なのは明らかでしょう。しかし、主張は右であっても、精神は中道になんていう神様みたいな人はこの世にいないと思いますし、安倍さんも神様じゃありません。傍から見た視点や神様の視点と主張する人自身の視点は当然ずれるはずですが、その人自身は、そのずれに気付かないと言うのが今回の記事の言いたいところです。ややこしすぎますか?。
というか、安倍さんの忠告に対する批判記事はほとんどありませんし、2ちゃんあたりの右傾化ぶりを見すぎたせいか、右がだんだん中央よりになってきたのではないかと私自身錯覚しつつこの記事を書いてしまったかもしれません。shuicti様や弓木様のごく自然な感覚の(ばかにしてるわけじゃないので勘違いしないでください)コメントを見させていただいて、ちょっと安心したというか、我に返ったという感じです。ちなみに前にも書きましたが、私は左じゃありませんので、ただの右利き?ですのであしからず。

投稿: 彰の介 | 2005/01/31 01:39

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