大衆とマスコミの負の連鎖?
あざらしサラダさんが活動を再開されています。相変わらず、切れ味鋭い問題提起をされて感心してしまいます。さて、そのあざらしサラダさんが誰が加害者で誰が被害者?というエントリーで、
「児童の成績控えなど盗難 教師がパチンコ中に」
という共同通信の記事を紹介し、報道のあり方に問題提起されています。簡単に要約すれば、ある学校の教師がパチンコしている間に車上荒しにあい、児童の個人情報を含む資料が盗まれてしまったというニュースなんですが、このニュースの書き方からすると、パチンコしてて個人情報を盗まれた教師がけしからん!ってことしか伝わらず、本来の加害者である車上荒しと、本来の被害者である教師の関係というか、立場はどうなっちゃったの?、マスコミはやっぱり受け狙い?しかできないの?という問題について、あざらしさんがマスコミ関係者の意見を求めたという次第です(内容違ったらごめんなさい)。
私のこの共同通信の記事に対する感想ですが・・・ほぼあざらしさんと同意見だと思います(これまた全然違ったらごめんなさい)。マスコミの方の仕事というのは、膨大な量の情報の中から、今伝えなければいけない問題を拾い出すことにあると思います。歴史家が膨大な歴史資料の中から、これはと思うものを拾い出し、歴史書などを作る作業と似ていると思います。1192年に片田舎の農民の青年が村の庄屋さんの娘と駆け落ちしたという資料が残っていたとしても、それはそれで当時の民衆の生活をうかがい知る貴重な資料とはいえますが(笑)、やっぱり普通の歴史家が歴史書を作るためにピックアップするとすれば源頼朝が鎌倉幕府を開いたことを取り上げることになるでしょう。そう考えると今回のニュースは何がピックアップされたかといえば、「個人情報」ではなく、「パチンコ」がピックアップされた可能性があります。「幕府」じゃなくて「駆け落ち」がピックアップされたようなもんでしょうか。本来は個人情報保護法に絡んで、全く偶発的な事と考えられる「車上荒し」にあうことまでちゃんと考えて情報を管理する必要があるという一例(教訓)が示されたことを主題とすべきなのに、最大の問題は「パチンコしたこと」というか、「教師のくせにパチンコなんてしてるから問題起すんだよ!」ってな主張になってるような気がします。要するにこのニュースの最大の注目点は「パチンコ」という言葉の響きの問題になっていて、真に個人情報の漏洩を問題としたいのであれば、表題にまで「パチンコ中に」なんて言葉は必要ないでしょう。私なら「児童の成績控えなど盗難 教師が車上荒し(被害)で」ってな感じにするかな・・。まあ、ここまでの考えはあざらしさんに指摘されたあとに考えたことなんですけどね・・・。
ただ、私がふと考えたことなのですが、なぜゆえに「パチンコ」という言葉がピックアップされたかということです。それはやっぱり、ニュースとしての話題性が高まるためと考えられますが、確かに、いかにもこの教師が個人情報というものを軽く扱っていたかということを表現するために、「パチンコ」という言葉はもってこいです。私を含めて「教師たるものがパチンコで一攫千金考えてるなんてどうなってるんだ」という漠然とした倫理観を持っている人が少なからずいるでしょうから、このようなニュースの書き方をされると、ついつい、この教師の過失を大きく感じ取ってしまうわけです。この漠然とした倫理観を巧みに使って、ニュースの本質をある意味混同させて話題性を高める・・・というマスコミの態度は、確かに問題があるでしょう。しかし、私がふと感じたことというのは、これが全面的にマスコミの責任かどうかという問題です。「卵が先かニワトリが先か」という問題になりますが、実はこの話題性への期待というのは、そもそもニュースの受け手である大衆側が持っているものなのではないでしょうか。ただ情報が盗まれたでは面白くないので、「教師がパチンコ中に」っていうんだったら面白い、と考えたのは、マスコミが先か大衆が先か??。もしかすると”先”なのは上で書いた漠然とした倫理観を持ち合わせている私をはじめ大衆の側なのかもしれません。大衆が欲する話題をマスコミが提供する、そうすると期待にこたえて大衆の方が面白がる・・・、そしてますます面白いニュースをマスコミが提供する・・・・、そしていつの間にかニュースの本質は見失われ、面白そうな部分だけが残る・・・。そんな大衆とマスコミの負の連鎖が存在するのではないかと考えてみたわけです。
例えば、長野のサリン事件では、無実の河野さんが犯人扱いされました。そもそも、犯人扱いしたのは警察です。なんか第一通報者のくせにぴんぴんしているやつがいる、家にはなんか薬品が積まれている・・・怪しい・・・、そしてマスコミもそれにのって、あいつが犯人に違いないとして報道し始めました。しかし、実はそんな話題を最も欲していたのは大衆だったのかもしれません。もっと犯人ではないかと疑わせるような情報を欲して、マスコミもそれに答えていろんな情報を流す。そしてますます犯人に違いないと核心しつつ、更なる情報を欲する・・・。これも怪しげな人物というか犯人像というかを欲したのは、マスコミが先か大衆が先か??、とりあえず、大衆が増幅器の役割をしなければ、マスコミも河野さんを犯人扱いする意味はなかったのではないでしょうか。ところが、大衆とは恐ろしいもので、河野さんが無実だとわかると、手のひらを返したように、警察やマスコミを批判する立場になりました。誤った一方通行的な情報を、さも正しいと報道された!我々はだまされた!と批判したわけですが、さてそこに大衆の罪というのは本当になかったのでしょうか・・・どうでしょう・・・。
そういう意味では、こんな大衆とマスコミの負の連鎖を断ち切るような試みが、今回のあざらしさんの問題提起と本職の記者とのブログのやり取りだったような気がします。まずは我々が話題性を欲する大衆の一人であることを自覚することが必要でしょうか。そして、マスコミの情報に対して、誰かが問題の本質と話題性の混同に気付いて指摘する。そして大衆の側も、マスコミの側もその指摘について考察する。日本人の好きな反省会っぽい印象はありますが(笑)、大衆の側の反省があるとマスコミの反省も引き出せるのではないかという期待も持てます。これは真の報道を導く正の連鎖になりうるかもしれません。
やぶ医者の浅知恵ではありますが、マスコミの世界の方にどんどんブログへ出向いていただいて、真の大衆を相手に真の報道をしていく試みをするってのはいかがなもんでしょう。やっぱり無理臭い???空論???。
追加記事:記事書き終わったあとに、あざらしさんの記事のコメント欄を見て、自分の記事がガ島通信さんやあざらしさんのコメントのパクリになってることに気づきました(大汗)。パックった形にはなりましたが、同じような考えをしているやつもいるぞということでご勘弁の程、お願いいたします。
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コメント
TBしたのですが、間違えた場所に打ち込んだようで、本文が表示されていません。すいませんが消去しておいてください。
投稿: ガ島通信 | 2005/04/05 09:27
彰の介さん、こんにちは。
おひさしぶりですね、「あざらしサラダを」大々的にPRして頂いてありがとうございます。(笑)
一連の経過を非常に分かりやすく解説して頂いて感謝します。
なにごとも一方的に思い込むのではなく、まずは相手の考えを聞いて見るということが大事ですよね。
そうしたコミュニケーションから、何かが生まれてくれればと思います。
投稿: あざらしサラダ | 2005/04/06 06:32
ガ島通信様、あざらしサラダ様、コメントありがとうございます。
なんとなく既存マスコミとブログの対立関係がクローズアップされますが、私個人的には、並存可能というか、並存すべきと考えています。負の連鎖ではなく、正の連鎖で話が進んでいくといいんですがね・・・。
投稿: 彰の介 | 2005/04/07 22:16
彰の介さん おひさしぶりです♪
正の連鎖って訳じゃないですけど また わたしなりにメディアについてブログを書いたのでトラックバックされていただきます。
投稿: 貞子ちゃん | 2005/04/11 22:10
貞子ちゃん様?、コメントありがとうございます。
私の商売は確かにマスコミ様にはいいネタを提供している職種になります。ちゃんと反省すべきことも多いのですが、正直それは何もわかっちゃいない!と感じることもままあります。そういう話は黙っていないことにしようかな・・・。そうでないと正の連鎖は決して起きませんから・・・。
投稿: 彰の介 | 2005/04/13 02:24