日本人の歴史観の原点(7)
前々回の批判テクニックを論破するでは、私の言うところの正当化史観の一部論法についてもちくりとさせていただきました。昨今の中韓の反日に対抗する形で花盛りとなっているこの正当化史観について、私の疑問点を述べたいと思います。
正当化史観が花盛りとなった理由は、その気持ちよさ、心地よさからでしょう。そもそも日本人には、中国や朝鮮に対して、悪いことをしたという負い目の気持ちがあります。そのために、中韓に対して謝罪や金銭の援助が行われてきたわけですが、昨今の中韓の対日姿勢は、残念ながらこの負い目につけ込んだ行為があまりにも目立ちます。そして、日本人はこの負い目とつけ込み行為に葛藤するはめになるわけですが、そんな時、日本の過去の歴史に過ちはなかったという解釈があればこんなにスキッとすることはありません。日本の歴史に過ちがなければ、負い目がなくなり、つまりは、つけ込み行為の理由がなくなり、一方的につけ込んでいる中韓が悪いと言うことができます。どうもそんなもやもやを吹き飛ばしてくれるような歴史観、すなわち正当化史観が花盛りになったのだと考えられます。
私は、正当化史観に関し、歴史の事実を振り返り、正しく解釈しようとしている部分があるため、全てを否定しているわけではありません。例えば、(1)で南京大虐殺のことを書いたのですが、この象徴的事件について、日本人として事実が知りたいと思うわけです。ところが、今までは事実を知ろうとする行為そのものが悪のような雰囲気がありました。反省一辺倒の歴史観からは、事実の確認すらできないどころか、事実無根の負い目を日本人に負わされ、つけ込み行為をさらにエスカレートされるはめになってしまうわけです。事実を見つめ直すこと、そういう意味での正当化史観は切り口としての威力が強く、当たり前だと思っていたことに“おやっ”と思わせる事ができる点に関して相当な力を持っていることを認めざるを得ません。
しかし、残念なのは、正当化史観の目的が、歴史的事実を正しく解釈しようとすることではなく、日本の歴史の正当化にあることです。何のための正当化かと言えば、うっとうしい中韓に物を言わせないために、日本の負い目を取り除くための正当化でしょう。
例えば、批判テクニックを論破するで書いたこともひとつです。日本が植民地支配をしたことに対して謝罪を繰り返していることとは反対に、ヨーロッパ列強が旧植民地国に対して謝罪を繰り返しているなんて話は聞いたことがありません。日本にはあれだけ怒っている中国には、つい最近までイギリスの植民地がありました。ところがイギリスと中国の間に「不幸の歴史云々・・」なんて会話は全くありませんし、うわさによるとイギリスの教科書にはアヘン戦争の記載がないと聞いたこともあります。こんな事実を突きつけて、「日本のどこが悪いんだ!」と言いたいようですが、こういう事実があったとしても、日本の正当化につながらないのは上記エントリーで書いたとおりです。これはただのイギリス批判と中国の偏った歴史観を言っているに過ぎず、日本も悪いと認めてしまっているだけのことです。
他に、例えば朝鮮半島の併合について、正当化史観では次のような事実をあげています。
朝鮮半島は日本がロシアと戦わなければ、結局ロシアの植民地にされていた可能性が高い。日露戦争後の朝鮮半島の併合は手続き上全く問題がなく、諸外国で反対した国はない。朝鮮側から併合してもらいたいと申し入れがあった。併合後、人口が併合前の3倍になった。すなわち前政権下の圧制から開放され、善政がしかれた証である。土地を強奪したかのように言われるが、日本人の土地となったのは高々数%である。言葉を日本語にしたり、名前を日本風にしたり、日本の宗教を押し付けたかのように言われるが、そもそも日本人と同格に扱うと言うことであり、他の列強による植民地支配での植民地国民の扱いとはくらぶべくもない。労働者の強制連行、強制的な従軍慰安婦など存在しない・・などなど・・・。
私が言いたいのは、これらの事柄が事実か否かではありません。上で書いたように、これらのことが事実だとして、結論として何が言いたいかが問題です。結論、それは「日本の朝鮮半島の支配に関し、日本人は全く負い目を感じる必要はない」ということでしょう。さらに過激に「何も負い目を感じる必要がないのに、わざわざ自虐して謝罪を続けるようなことをするからつけ込まれるのだ、日本が悪いなんて言ってるやつは、反日的日本人、売国奴だ!」と主張するにいたっています。
そんな正当化史観を唱える方に、私は1つ質問してみたいことがあります。
もし、日本が正当な手続きで朝鮮半島を併合したから、日本が朝鮮に善政したから、朝鮮人を日本人と同等に扱ったから、日本の歴史に問題はないというのであれば、もちろんその逆も受け入れるのですね?。
架空の話ですが・・・、歴史の流れがちょっと狂って、日本が明治維新に大失敗し、列強の植民地にされてしまった。そして大韓民国は大改革に成功し、一気に列強と肩を並べるまでの力を得るに至った。そんな中、韓国軍が日本に進軍し、列強を追い払い、日本を正当な手続きで植民地化した。日本語は禁止され、韓国語が強制され、私の名前も「ぺ・ヨンジュン」に改名させられ、神社仏閣が取り壊された。列強の搾取とは全く違い、インフラが整備され、人口も増え、身分制度も崩壊し、江戸時代とはくらぶべくもない韓国支配による平等で豊かな生活を送ることができるようになった。韓国は白人支配から日本を開放したと主張した・・・。
・・・としたら、正当化史観の方は、韓国のしたことに、日本人として全く疑問を持たないということになりますね。韓国はいいことをしたのだから日本人として文句を言うことはないと・・・、いや~、その度量の広さにはすばらしいものがあると思います。
しかし残念ながら、私にはそんな度量の広さはありません。私は誰がなんと言おうと、屁理屈を言おうと正真正銘の日本人です。もし過去の歴史が上のような歴史であったら、豊かになろうがなるまいが、正当であろうがなかろうが、私は日本人の誇りをめちゃくちゃにした韓国を絶対に許さないでしょう。いやむしろ正当化史観の方々のように、他国による日本の支配を認めるような日本人としての誇りを失った人々に「この反日野郎!売国奴!」と罵声を浴びせたに違いありません・・・。
私は、上に書いた逆の歴史を全く受け入れることができませんので、日本人として過去の日本の行為を正当化することはできません。しかし、一つ一つの歴史的事実をすべて否定しているわけではないのです。日本が韓国にある意味で善政をしたのも事実でしょう。しかし、それと正当化は別問題ですし、韓国のつけ込み行為とも関係ありません。負い目の部分はやっぱり負い目であって、そこから目をそらすことはできないのではないでしょうか。実は戦後60年もたって、この負い目の部分の検証が行われていないのではないかと感じています。形ばかりの謝罪を行うことによって反省を見せかけることよりも、負い目をさらけ出して日本人として真の事実を知ることこそ大事であると感じます。その上で、その下地があって初めて日本の善政部分、中韓のでっち上げの検証、つけ込み行為への反論ができるのではないでしょうか。私はそう考えています。
こんな私の考え方は全く受け入れられないという方も多いかもしれません。しかし、最後に1つだけ言いたいことがあります。昨今、主にこの正当化史観を唱える方々が、たやすく「反日的日本人」とか「売国奴」等という言葉を使うような気がします。しかも公的な場で、大学の教授や政治家、評論家といわれる学識の高い人までが当たり前のように使っています。しかし、私はいかなる理由があろうとも、言論上、あるいは思想上の問題で、同じ日本人をこのように呼ぶことはあってはならないと思っています。議論の方法としては、「お前の母ちゃん出べそ!」と同等のレベルですし、そうでなくても、日本人が日本人のことを否定する発言こそ、まさに「反日的」ではありませんか。うわべだけの罵り合いではなく、中身の議論をすればいいのです。汚い言葉を発することで、優越感にひたっている様子に、寂しさを感じ得ないと思ったまでです。
ということで、本日も長々とお付き合いいただきありがとうございました。また、次回を期待せず、無駄にお待ちください。
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