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2005/07/16

やぶ医者とボケ医者

 最近こんな医療訴訟ネタが出ていました(宇治川病院医療事故、2億5千万円賠償命じる 京都地裁)。
 なんと、民事裁判で病院側に2億5千万円もの損害賠償が命じられ、その訴訟に関わった医師も、刑事裁判の方で一年の実刑判決(控訴中)が出ているようです。

 その医療訴訟事件なんですが、上のリンクのインターネットの記事しか見ておりませんので、細かいところが間違っているかもしれませんが、まとめると次のような話です。
 ある少女が蕁麻疹でその病院にかかりました。そこで今回実刑判決をうけている医師が、この少女に「塩化カルシウム,Ca」の投与をするように看護師に命じたようですが、この看護師が誤って「塩化カリウム,K」を静脈注射してしまったようです。このため、この少女が心配停止状態になってしまい、低酸素脳症になってしまったということらしいのです。
 
 塩化カリウムというのは、極めて危険な薬物です。人間の体は、ナトリウムやカリウムの濃度が常に一定になるように調節されていますが、高濃度のカリウムがいっきに血液に入り、心臓に達すると、心臓は瞬時に止まってしまいます。したがって、カリウムが体に不足している人などにカリウム製剤を投与するときは、必ず大きな点滴に溶かして薄めた上で、ゆっくり投与するのが常識です。したがって、この看護師の「カルシウム,Ca」と「カリウム,K」を取り違えるというミスはとてもミスで許されるものではありません。
 ただ、問題は指示を出した医師に責任があるのかどうかですが、その記事を読むと、「投与の際、立ち会わず、その観察の義務を怠った」ということで、責任があるとされたようです。しかし、現役のやぶ医者である私からすれば、問題の本質は別にあり、立会い云々が問題だとは思われません。

 私がこの記事を読んで最初に感じた疑問であり、実は問題の本質なのではないかと感じていることは(記事に少しだけ書いてありますが)、「なぜこの医師が蕁麻疹の患者に塩化カルシウムの投与をしようと思ったか?」です。実は蕁麻疹に塩化カルシウムを打ったからって全く効き目はありません。つまり、こんな指示を何で出したのか全く意味不明なのです。推測でものを言ってしまいますが、私の勘が確かなら、この医師は、まともな判断能力を持ち合わせない「ボケ医者」に違いありません。すなわち、もうすでに医師としての能力を喪失している可能性があるのです。つまり、カルシウムとカリウムを間違えたというのも問題なのですが、そんな医師が働いている現実にこそ問題があると言いたいのです。 

 医師を料理人にたとえてみると、やぶ医者というのはまずい料理を出す料理人というところでしょうか。もちろんまずいにも程度があり、あんみつに大量の塩をかけてお客に出すレベルが「ボケ医者」レベルにあたると考えられます。もうやってることがおかしいですから、料理人の世界であれば手を引いていただくのが当然でしょうし、食べなきゃいいのですからそれほどの問題ではないかもしれませんが、生命を預かる医者の世界には意外に多く生息しているのが大問題なのです。今回詳しくは書きませんが、その問題性についてはおいおい機会があれば書いていこうと思っています。

 残念ながら、この医師に懲役1年お勤めしていただいたところで何も解決にはなりません。もっと早くに医師を辞めていただいていれば、そもそも問題にもならなかったのです。ただ、こんな明白なことですら、同業の身で、こうして意見することに相当な勇気が必要なことも付け加えておきます。といいつつ、今後ちびりちびりと、このあたりの問題をばらしていこうと考えている一やぶ医者の私でした。ということで、「黒い巨塔シリーズ」の始まりです。いつものことながら今回だけかもしれませんが・・・。

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コメント

こんにちは、
初歩的な質問ですが、塩化カリウムは医療現場では具体的にどのような目的に使われているのですか?
どこぞの安楽死事件でも問題になっていましたが、私の中では塩化カリウムとは米国などの死刑執行で使われる薬物という認識しかないのですよ。
そういった危険な薬物が薬剤棚に普通に置いてあって、ちょっとしたミスで誤用されている、ということは恐ろしい~かぎりです・・・。

投稿: まーどんな | 2005/07/17 17:38

まーどんな様、コメントありがとうございます。
 カリウム製剤のご質問ですが、人間の体にはカリウムというのは絶対に必要な電解質なんですね。
 ですから、(一般論ですけど)食事を取らずに点滴だけで栄養しようとすると、必ず点滴の中にカリウムを入れなくてはいけません(体のカリウム濃度が低くなると、いろいろと変調をきたしてきますし、ある種のお薬が効き過ぎたりと問題が出てきます)。
 当然の発想として、最初からカリウムが薄めてある点滴もあります。大半はこの薄めてある点滴なので、別に問題ありません。しかし、体の中のカリウム濃度が何らかの理由で低くなってしまった患者さんに対して、そんな薄めてある点滴でカリウムを補おうとすると、ものすごい量の水分も入れることになってしまいます。そこで、濃いカリウム製剤を、点滴に入れて、普段摂取するよりやや多い量に調節して点滴するんです。逆に、あまりカリウムを投与してはいけない患者さんに対しては、カリウムの入っていない点滴に、ちょっとだけ濃いカリウム製剤を入れて普段摂取するより少ない量に調節して点滴する場合もあります。
 ということで、この点滴を調剤するのにどうしても濃いカリウム製剤が必要なんですね。わからない?かもしれませんが、また聞いてください。最近は、このカリウム製剤に「静注禁、点滴専用」みたいな文字がでかでかと書いてあります。しかし、実際投与するのは人間ですから、この手の間違いは永久に続くかもしれません・・。

投稿: 彰の介 | 2005/07/17 18:35

よくわかる解説、有難うございました。
今のIT時代、人間のうっかりミスをなくすためにも、自動調剤機、自動処方機などがもっと活用されるといいのではないでしょうか・・・。
電車や飛行機だって、操縦している人間が居眠りしても、コンピューターが危険を回避してくれるシステムがあるくらいですから、コスト面が問題ではありますけどね。

投稿: まーどんな | 2005/07/18 10:47

まーどんな様、コメント返事遅れました。
自動化はいいですね。そのうち、やぶ医者が寝てても診断や治療をしてくれる仕組みができると良いんですが・・・・。こりゃまた、失礼いたしました。

投稿: 彰の介 | 2005/07/21 00:37

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