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2005/08/03

医療批判にも十分なご注意を

 医療界の裏側をチクリチクリとばらしていって、密かに(←これ強調)現代医療に問題提起をしようと考えている今日この頃のやぶ医者の私ですが(「黒い巨塔シリーズ」として)、その前に、我々医療界の問題点を全て棚上げして、患者としての皆様方が決して陥ってはならないところを押さえておこうと思い立ちました。

 数年前、私は、とある患者さんを外来で診ていました。その患者さんは寒さや冷たい水をさわる等の寒冷刺激で指先が真っ白になってしまうという症状を訴えていました。この症状は、チェーンソーとか使っている人がなることもありますし、ある種の難病に合併することもありますし、全く原疾患がなくこういう症状がでることもありますが、医学用語ではレイノー症状とか、レイノー現象と呼ばれているものです。

 この患者さんはこのレイノー症状だけではなく、いろんな症状を呈していましたので、入院していただきいろいろ調べたりしていたのですが、結局病名ははっきりしませんでした。正直にこの患者さんに病名はよくわからないということも伝えましたし、レイノー症状に対するお薬を使いましょうといって様子をみることで納得いただいていました。
 そんなある日、外来でこの患者さんが不意に私に発した言葉にびっくりしてしまいました。

「先生、私、お祓い(おはらい)とかしてもらった方がいいのでしょうか?」
私は突然のことにびっくりして、
「お、お祓い?、何でまたお祓いなんですか?」
と聞き返したのです。するとこれまた、予想もし得なかった答えが返ってきました。
「だって、レイノーなんでしょう?、れいのう・・、原因不明の・・・」
・・・・・・・・、レイノー、れいのう・・霊能・・・・、お祓い・・・・・。
 
 これ、決して笑い話に使うつもりじゃないんです。私としてはめちゃくちゃ反省した事例なんです。そもそも原因不明だとたやすく言っていたのですが、この患者さんにはものすごい不安感を煽っていたようなのです(大反省)。そこへ、レイノーとくれば、確かに霊能からお祓いという発想も十分理解できます。たまたま、この患者さんが私に相談してくれたから、この患者さんの勘違いを説明訂正することができました。これは私にとっても、この患者さんにとっても本当に幸運なことでした。 
 
 患者さんの不安感や疑問を、医者の側から察しようとする努力がないということは、それは医者にとっての常識や言い分を、一方的に患者さんに押し付けているのと同じことです。ですから、私はこの件以降、不十分とは思いますが、できうる限り患者さんの気持ちを聞き出そうと努力しているつもりです。まあ、所詮やぶ医者の私のことですから、患者さんの心理面でのケアがしっかりできているとは到底思えませんが・・・。

 しかし、そんな私や、現在の医療全体の、患者の心を半ば無視した医療をあえて棚上げにしても皆様に言いたいことがあります。それは、こんな医療の隙間やひびに、一見かっこよく、くさびを打ち込んでいるように見えて、実際にはより患者さんの不安感を煽ることによって、視聴率や販売部数を上げようとするマスコミや、一儲けたくらんでいるやからが多数存在するということです。例えば上の例に出した患者さんが、もし「大病院の医療に期待してはいけない。現代医療は正確な診断もできないし、治療もまともにできない」「西洋医学はもはや限界」等といういかにもそれらしい記事や文章をどこかで見てしまい、さらに不安を煽られたとしたら、きっと病院には2度と足を運ばず、怪しげな霊媒師に通いつめ、取り付いた霊を取り除くために大金を貢ぐ破目になったかもしれません。そんな、それらしい煽り行為には十分注意していただきたいのです。

 もう一度、現代の医療の問題点を、総棚上げにして言います。
 西洋医学は腐っても現代医療の中心であり、東洋医学、カウンセリング、免疫療法、自然療法、民間療法、神頼み、お祓い等・・・は、あくまで補助療法であることを忘れないで下さい。また、西洋医学は決して完成したものではなく、まだまだ発展途上であり、診断や治療に限界があるのはむしろ当然です
 ですから、西洋医学の批判をどれほどしても、西洋医学の限界をどれほど指摘しても、これに取って代わる中心となる医療は残念ながらありません。ちなみに私は、例えば漢方や、場合によってはお祓いまでも決して否定しているわけではありません。しかし、それはどうがんばっても医療の中心にはなりえないのです。

 そんな目で[ゴーログ] 医者を選ぶのも寿命のうち!に紹介されているもぐら叩きのような医療の現実をぜひ読んでほしいと思います。大学病院には確かに腐りかけている部分もありますが(笑)、それらしい表現で「大学病院」とじゅっぱ一からげにしてダメ病院のレッテルを貼ってしまうと、極めて良質な医療を受けるチャンスを失う可能性があることも付け加えさせていただきます。

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コメント

彰の介さん 目からうろこのお話 ありがとうございました♪
そうなんですよね~西洋医学に取って代わって 医学の中心になるような医療は 無いんですよね~。
一番良いのは 常日頃からの生活習慣を見直して まず 大きな病気の予防に心がけるということなんでしょうけど。
病は気からって言葉もあるし 病気予防には 好き嫌いなく何でも美味しく食べて 適度に運動して明るくのんびり生きてゆくしかないような気もする今日この頃です。

投稿: 貞子ちゃん | 2005/08/03 18:41

貞子様、コメントありがとうございます。
健康のための予防医学は大事ですね。私なんか、口ばっかりで、食事はいい加減、運動しない、睡眠時間少ない・・・・、睡眠時間少ないのは、ブログのせいかも・・・・。ブログは健康に良くないかもしれないけど、ストレスのはけ口にはなってるので、いいのやら、悪いのやら・・・。

投稿: 彰の介 | 2005/08/03 21:03

彰の介さん、こんにちは。
病気のときは、患者はつい不安なことばかり考えがちなので、周りのものが患者の言う事や医者の説明を良く聞いて、冷静に判断してあげることが大事だと思います。
特に、医師の説明は専門性が強くなかなか理解することが困難なので、少しでも正しく理解できるように、説明を受ける前にあらかじめ勉強しておくことも必要かなと思いました。

投稿: あざらしサラダ | 2005/08/06 18:12

あざらし様、コメントありがとうございます。
私達はついつい専門用語を使って患者さんに説明してしまうことがあります。でも意外に患者さんの方は、質問もせず、ふんふんと聞いているので、実は何もわかっていないことに気付かないこともあるんですね。このあたりは反省してもなかなか改善されない部分です。
あと、患者さん側がしっかり勉強していただくことは非常に大事なことだと思います。一点注意させていただくと、現代医療は体系化されているとはいえ、例外がつきものということです。本に書いてあったことと、医師の説明とに矛盾があったからといって、それが間違った医療かどうかはわかりません。ぜひ医師に質問していただくことをお勧めします。

投稿: 彰の介 | 2005/08/07 00:28

『彰の介の証言』拝見しました。
医療を始め、政治・経済・マスコミ・倫理などの諸問題を的確に捉え、鋭く分析するアキラさんのブログに共感を抱きました。
ところでタイトル下のスナップは、噴火前の有珠山展望台から見た昭和新山の様ですネ! 私は、その活火山の近くに住む者です。常日頃、自然の驚異に接して暮らしています。アキラさんはロープーウェー乗り場横の<熊牧場>は入場されましたか? 北海道のシンボルは、何と言ってもヒグマです。山親爺と共存する緊張感を、少しでも味わって頂きたいと思います! 再び来道の予定があれば、より良い景勝地を紹介します。その際には、メールを下さい。お待ちしています。
私は20年以上、ある病気で医者やクスリに依存している患者です。

投稿: 北の凡人 | 2006/06/05 10:31

北の凡人様、コメントありがとうございます。
有珠山、昭和新山は観光で数年前に行きました。熊牧場にはいっていませんね。忙しくてなかなか北海道にはいけないような気がしますが、その節はよろしくお願いいたします。
ご病気少しでもよくなるようお祈り申し上げます。

投稿: 彰の介 | 2006/06/05 20:37

To dear doctor Ranosuke.
Thank you for offering information to be worthy.
I see it always interesting.
I read the site of Mr.Ordinany man in the north who had bee contributed the other day by chance.
The site was "Merits and demerits of the present age medicine".
A lot of information that had not been herd had been published up to now.
The doctor Ranosuke has asking.
Could you analyze the credibity of the content in specialist's standpoint?
I look for ward to the answer.

投稿: ZNR | 2006/06/10 13:33

Deer Mr.? ZNR.
Thank you for commenting in "Akiranosuke no Syougen".
I am afraid that I cannot answer in detail for your question here.
However, I don't think he has sympathized with my blog when I read his insistence to the ordinary.
This is all of my answer.
I am sorry in primitive English.
I hope to see more of you.

投稿: 彰の介 | 2006/06/12 00:49

To Mr,Akiranosuke.
I understood the reason why you had not been answering my question.
If sense of values is different,it is natural that contradiction disturbs the discussion.
By the way, do you know Ordinary man's true colors?
He look like a thoughtless carpenter without the academic background,it is unnatural that the dipsomaniac analyzes logic and ethice.
Please forget my question.
You should keep managing "Akiranosuke's testimony" by belief.
My writing ends by this.
Good-bye.

投稿: ZNR | 2006/06/14 22:26

Deer Mr.? ZNR.
I don't know what kind of person he is, all of my insistence for him are written out fully into this article " Enough attention for the medical treatment criticism".
Thank you for commenting again in my blog.
I will wait for the next coming.

投稿: 彰の介 | 2006/06/15 00:41

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