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2005/11/03

やぶ医者の給料

 私は、職業柄やぶ医者をやっていますが、私の場合、今のところ大病院で働く勤務医というのをやっています。特に現在は大学病院という、病院の中では最も権威のある??ところで働かせていただいております。

 本日、こんな記事を見つけました「開業と勤務医の格差2倍 報酬の配分見直し課題に」。部分的に抽出しますと、

厚生労働省が公表した医療経済実態調査によると、開業医の報酬などを示す収支の黒字額は228万円と病院勤務医の平均月収の2倍に上った。こうした“収入格差”は過密な業務内容などとともに、近年、勤務医が開業医に転じる一方、小児救急をはじめ病院の医師不足が深刻化する一因との指摘がある。
 医療機関が公的医療保険から受け取る診療費の公定価格である診療報酬が「開業医に手厚すぎるため」といわれており、医療制度改革で、配分の見直しが検討課題になりそうだ。
この記事をそのまま読んだ方は、私の給料がまさか月給114万円だと勘違いされたのではないでしょうね・・・。そんなに稼いでいるわけはありません。私の給料、そう、職場である大学病院からいただいている給料が「0、ゼロ円」であることは、以前の記事にも書きました(私も偉くなりまして、エルメスから・・)。もちろん、他院でアルバイトをしていまして、収入はゼロではありませんし、はっきり言ってしまえば(この辺り、医療関係者はばらしてもらいたくはないんでしょうが)、私の場合、週たった一日半のアルバイトで、世間の普通のサラリーマンよりは多い収入を得ていると思います。医者の給料が高いか安いかはともかくも、我々医療界のお金の流れが、極めて”いびつ”な世界であることはわかってもらえるのではないでしょうか。我々の世界は、仕事量と収入とが、全く比例しないのです。

 私自身が勤務医なので、勤務医の不満をたれましょう。勤務医には労働基準法がなぜか適応されません。日中の8時間労働をした後に、ろくに寝れない16時間の当直、その後普段の日中の8時間労働、すなわち32時間連続勤務なんていうのは当たり前にあります。それが終われば帰れるかといえばそうでもなくて、遅くまで仕事をし、さらに家に帰っても、入院患者に何かあれば、いつ呼び起こされるかわかりません。科によっては(外科など)、夜中に緊急患者があれば緊急手術だ、緊急検査だなんてこともおまけについてきます。そして、なんと言っても、重症の患者がいつ来るかという緊張感と、来たときの責任感によるプレッシャーは計り知れません(これが、いざとなれば大病院へ転送すればいい開業医の先生との最大の差だと思います)。そして上の記事にあるように、そんなこんながあっても、決して収入に優位性があるわけでない(それどころか、私のようにただ働きさせられている病院もある)とコリャ、本当に仕事をしている意味を見失いそうです。

 そんなことで、ある一定の期間、勉強として大病院で働き、時期がこれば楽な病院へ移るか、開業するかと考えるのは、人間として当然かもしれません。医者といえども人間です。楽して儲かればそれにこしたことはありません。もちろん、勤務医、開業医、それぞれいろんな先生がいますので(これはもう、本当にピンキリです)、一概にどっちがどうとは言えないのも現実です。しかし、もう少しこの医療界の社会主義体制が改善できないものか、お国にも十分考えてもらいたいものです。お金の配分だけいじったからといって、変わるものではないと思いますが・・・・。

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コメント

今まで時々読んでましたが、医者とは知らなかったので驚きでした。
ところで、開業医と勤務医の収入の差は分かりましたが、それは二極化してるということですか?

投稿: おまーにゃ | 2005/11/06 15:50

おまーにゃ様、コメントありがとうございます。
私の職業は医者じゃなくてやぶ医者です。まあいいか・・・。
ということで、お尋ねの件ですが、収入が二極化しているわけではないと思います。ちょうどサラリーマンと、脱サラして自分で店を始めた人との違いですから、自営業の方が給料が高くても仕方ないかもしれません。ただ、医療というのは開業医だけでは成り立ちません。大病院がないというのはありえないんですね。その大病院で働いている我々が、経営の責任はないものの、仕事に比べ給料がもらえないとなれば、さっさと開業するかと考えてしまうのはごく自然なことです。それが人手不足から大病院でしかできない医療の質を落としてしまっているかもというのが問題提起です。ただ、私も現在の大病院の待遇がいいとは思いませんが、問題はそれだけとも思えないというのが本音で、そのあたりはいずれ記事にします。たぶん・・・。

投稿: 彰の介 | 2005/11/07 01:29

こんにちは。私は眼科の開業医をしている51歳の男性です。いつも、地域の中核病院、大学病院の先生には、とてもお世話になっています。この場を借りて、心からお礼を申し上げます。

日本国内の医師報酬の不合理、アンバランスもありますが、外国と比較した時に感じる差も大きいように感じます。少なくとも北米とかヨーロッパのドクターが一人の患者さんに費やす時間は、日本のそれよりかなり長いようです。それでいて、高い生活水準を維持できるのは、ドクターフィーが日本より相当高いからでしょうか?

いずれにせよ、医師報酬も含めて、医療業界にも、市場原理が導入されるべきだと私は思います。多く働く有能なドクターは、多く支払われるべきです。問題は、医師の有能性をどのように評価するかという事。また、医療費という限られたパイを、どういう基準で配分するかでしょう。

医療業界は、日本の中でも色濃く社会主義を残している分野だと思います。医療が弱者を扱う以上は、ある程度しかたないのかもしれないですが、もう少し労力に応じた報酬が支払われるような合理的なシステムが必要ですよね。

投稿: jun | 2005/11/10 18:11

jun様、私のような未熟者へコメントいただきありがとうございます。
一概には言えませんが、私も、医療の質を上げるには、ある程度市場原理の導入が必要だと考えています。現在のできるだけ仕事しない方がお得(特に勤務医)状態では、質が悪化するばかりです。
所詮医者も人間ですから、競争がなければ進歩がないと考えています。でも、こういうことあまり言い過ぎると怒られるんでしょうかね?。

投稿: 彰の介 | 2005/11/11 00:21

ご返事有難うございます。
そうですね。市場原理という言葉は、日本医師会ではタブーでしょうね。

私は極端な事を思考実験として考えるのが好きでして、たとえば公的医療保険を全廃して、各個人が自分の考えで民間の保険会社の医療保険に加入すると、医療業界はどうなるのだろうとか考えます。

まず、喫煙者は割り増し保険料を払わないといけないでしょう。保険会社は、必死で治癒率の高い医療機関を探し出し、そういう医療機関と契約を結び、自社保険加入者にはそういう所で治療を受けさせるようにするでしょう。

喫煙者の減少とそれによる無駄な医療費の節約、必要最小限の入院日数、最適化された検査項目、疾患が発生する前に阻止するための検診サービス、タバコ・アルコール・ドラッグ・生活習慣病などに関する健康教育などなどが充実するかも知れません。

民間の会社は、赤字垂れ流しなど許されませんから、医療の効率性は格段に上がるはずです。

世知辛く聞こえるけれども、利益を上げる事は良い事です。非効率、不合理の結果としての赤字を計上する国保や健保を存続させるよりずっとマシです。赤字の医療財政を放置して、あげくに国民一般へ増税、社会保険料増額という形で転嫁するのは悪であり、実際問題いつまでも継続するのは無理でしょう。

民間に完全に任せたら、保険に入れない超弱者はどうなるか?難しい設問です。

これについては、現金給付という形の生活保護ではなく、医療サービス給付という形にして生活保護を与えたら良いのでは?現金だと医療を受けないで別のことに消費してしまう人も多いでしょうから。

生活保護は国民の税金で行うサービスである以上、相当に厳格な審査を通らないと受けられないようにするべきでしょう。

働けば働けるのに働かないでノウノウとして生活保護を受けるとか、50働く人と100働く人が同じ給料だとかは、悪しき社会主義です。それは、弱者をいっそう弱者にするように働くシステムだと思います。

話が横道に入りましたが、あくまで思考実験です。考えるのは面白いし、しかもタダです。まあ、「利益を上げるのは、赤字を続けるより絶対に善である」という部分は、私の確信ではあります。大阪で生まれ育ったので、その影響もあるかもしれません。


投稿: jun | 2005/11/11 08:19

jun様、コメントありがとうございます。
私は、現在社会主義経済の中に身をおいていますが、父が会社を経営している関係で、市場原理について講義を受けています(笑)。父は、医療界についてとにかく競争がないということを言います。ところが医者の中には、自分達の仕事のことを、散々給料もらっておいて「ボランティアだ!」なんてあほなことをいう人もいるんですね。現状をボランティアといっているのですからこれ以上の質の向上には結びつきそうもありませんね。
患者選択の問題がありますが、もう少し競争があってもいいのかなと思うばかりで、jun様のご意見と通じるものがあると思います。

投稿: 彰の介 | 2005/11/12 17:58

そうですか。私の父も工場を経営していました。肝癌で20年以上前に死去しましたが。 また、兄弟や親戚は自分のビジネスを持っている人たちばかり。サラリーマンが殆どいません。ですから、資本主義の中で生まれ育ったという点では、彰の介様と似ていますね。

日本医師会は現行保険制度を維持しようと署名集めを始めています。現行医療保険制度も良い面が沢山あるのは事実ですが、現在の自分たちの権益を守ろうと汲々としているようで見苦しい、少なくとも私にはそう見えます。でも、私は署名集めに協力はしますがね。なんせ私は、やぶ医者であると同時に現実主義者でもあるのです。

でも、我慢がならなくなったら医師会を退会するつもりです。私の知人の耳鼻科の開業医は医師会を退会して「馬鹿どもと付き合わずにすむようになって、本当にせいせいした」と言っておりました。私もあと数年で引退しようと思うので、専門医の資格だってどうでも良いのです。医師会に属する意味合いも薄れていくと思っています。

医師会の会費は本当に高い。その上、医師政治連盟の会費も取られる。こんなお金を集めてロビー活動をしている(早い話がお金を政治家にばらまいている)のでしょう)。なんだか、医師会に入っていると自分の魂まで汚れていくような嫌な気分になります。


投稿: jun | 2005/11/12 20:21

jun様、またまたコメントありがとうございます。
私も、国保の関係で医師会雑誌が届くのですが、本日国民皆保険の署名の書類が届きました。
 私も現在の医師会の考え方には賛同できない点が多いです。医師会も歯科医師会のような問題が起きないように願うばかりです。

投稿: 彰の介 | 2005/11/12 23:37

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投稿: 医療保険・がん保険 | 2007/10/31 17:55

労働基準法以上に働かせるのなんかどの会社でも当たり前のようにある。医者はバカばっかだなホント

投稿: | 2012/11/18 22:09

名乗りもしない方
「医者はバカばっかだなホント」のようなコメントをするために、このブログを使うのは勘弁してくれ。

投稿: 彰の介 | 2012/11/18 22:23

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