ネット社会の漠然とした不安
年の最後に、ずっと気になっていた話題について語っておきたいと思います。それは韓国での「ES細胞捏造問題」のことです。と言っても、捏造そのものの問題ではなく、そこに起きた、世論とメディアの対立が異常に気になりました。この問題を韓国の問題とするのは簡単ですが、日本人の我々にとっても考えさせられるものがあると考えたのは私だけでしょうか。
黄禹錫ソウル大教授による「ES細胞捏造」に関して、私は「あ~そうなの」という感想しか持っていません。私も重箱の隅をつつくような論文を投稿しておりますが、その内容に捏造はないものの、手心は・・・・おっと、それ以上は言えませんが、それにしても大それた嘘を世界に向かってしちゃったもんだとその度胸に感心せずにはおれません。日本でも旧石器時代の遺跡に関する大捏造事件がありましたが、研究者というものは、時にこういう罪を犯してしまうものなのですね。
ところで、これが日本で起きたものであればおそらく袋叩きにあっただけなのでしょうが、韓国では全く様相が違ったようです。これは先日の朝のフジテレビ系の番組を見て知ったことなのですが、そもそも韓国ではこの世界的発見をした(もちろん捏造だったわけですが)、黄教授が国民的英雄になり、ノーベル賞間違いなしと熱狂的にもてはやされていたというのです。まあ、そこまではわかるのですが、韓国メディア(MBCテレビ)の報道番組が、この研究に関する疑惑を追求し始めたところ、なんとこの国民的英雄を追及したメディアは国民的批判を受け、番組は打ち切り寸前、テレビ局も窮地に陥ったというのです。その辺りの詳しい記事を見つけることができませんでしたが、韓国、過剰な「愛国」暗転あたりを参照してください。産経らしい嫌韓を言いたいだけの文章ですが、一部引用しますと、
ES細胞の話がマスコミに登場しない日はないほど黄教授は国民的な人気者になった。国民すべてがまるで生命工学の専門家になったようにES細胞や黄教授のことを話題にするといった社会的熱狂が続いた。黄教授の疑惑を最初に提起したMBCテレビは“国家的裏切り者”あるいは“非国民”として世論の非難を浴び、愛国デモに押しかけられたり広告拒否や番組中断に追い込まれた。これには正直びっくりしてしまいました。捏造という結果を知ってからこのニュースを知ったからという面はありますが、国民的熱狂が、既存メディアの正当な、しかも結果的には極めて国益にかなった追求を押しつぶすという、極めて特異な例と感じました。産経をはじめとした嫌韓の方々には格好の韓国叩きネタになったと思われますが、これをお隣の恥として笑っていていいのかというのが私の心配です。漠然とした不安・・・。(自殺はしません・・・よ)。
漠然とした不安・・・、それは、我々ブログ書き(そんな言葉ありましたっけ?)が、マスコミに対するご意見番と言ってはばからないところにあるような気がします。基本的にマスコミ対ブログというのか、もっと広く「マスコミ対ネット社会」というものを、我々が履き違えてしまうと、韓国と同様の失敗を我々の手で作り出してしまうような気がしてなりません。要するに、マスコミは叩けばいいという存在ではないということです。そしてマスコミにとって、ネットが脅威であって、ネットを敵視していたとしても、ネットの住人の我々がマスコミを敵視する必要はなく、何から何までマスコミに攻撃を加えることを使命とする必要はないということです。問題の本質を見抜けず、うわべの気持ちよさから「叩き」という行為のみをし続ければ、いつか今回の韓国のような大恥をかくことになりかねないのではないでしょうか。
これが私の漠然とした不安です。所詮ネットの片隅でひとりごちているこんな小さなブログでも、もしかして、大きな過ちをおこす原因となってしまわないか・・・・、私に限ってそんな影響を与えることはないとは思いますが、あおりの一分子になる可能性は十分にありえます。そんな存在にならないよう、非国民といわれても、物事の本質を語っていきたいと誓う私なのでした。
そんなことで、物の本質を見抜くこと、雰囲気に飲まれないこと、これを本年の締めくくりの言葉としたいと思います。2006年は、ブログ社会にとっていい年になりますように。そして、無駄に「彰の介の証言」にもお付き合いください。それでは、良いお年を・・・。
人気blogランキングに登録しています。ぜひ清きクリックを!
↑↑クリック!
| 固定リンク
| コメント (9)
| トラックバック (3)
最近のコメント