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2006/04/14

警察の怠慢

 このところ、警察の対応(というより、対応せずなにもしないということ)が問題視されることが多くなりました。昨日も「栃木・リンチ殺人事件」での、警察の不手際が、裁判で認められ、極めて画期的な判決であと報道されました(捜査怠慢、殺人と因果関係を認定…栃木リンチ事件)。上記リンクなどに書いてある警察官の対応が本当だとすると、正直聞くに堪えない話であり、あきれて物も言えません。実際の事件の実行犯は無期懲役などになっているようですが、心情からすれば、無対応の警察官にもそれなりの刑事罰を与えたくなるというものです。刑事罰どころか、判決の損害賠償は、対応した警察官が生涯償って支払うものではなく、結局のところ税金から支払われるものですから、怒りがこみ上げてきます。

 「警察がなぜ不誠実な対応をするのか。」私はこの問いへの極めて簡単で単純な答えを知っています。それは、「めんどうくさい」からに違いありません。例えば死体が発見された時、自殺か他殺かを鑑別しなければならないわけですが、他殺を前提として疑いながら現場を見るのは、テレビに出てくる名探偵くらいのものでしょう。大半は「自殺であってほしい」と願いながら現場を見ているに違いありません。何しろ、自殺であれば捜査はそれにて終了、ご苦労様でしたでおわりですが、他殺だったら大変面倒な事になります。公の中の公である警察官とはいえ、警察官である前に人間ですから、給料同じなら、余計な仕事をするより平穏無事な社会の方がいいに決まっています。「いちいち事件を起こすなよ」というのが本音なのでしょう。

 私は職業柄やぶ医者をやっていますが、我々の商売上、救急外来には心肺停止状態で運ばれてきて、残念ながらその場で亡くなる患者さんがいます。明らかに病気の悪化や急変というのが特定できる場合もありますが、原因不明の場合も少なくありません。こんな原因不明の場合は、事件性がないかどうか、警察の方にお越しいただいて見てもらうことがあります。原因不明とはいえ、何らかの病死が疑われることがほとんどですが、以前ちょっと怪しい患者がいたことがあります(これ、ばらしてもいいのかな?)。結局原因不明で亡くなったのですが、全身のあちこちに、”すり傷”があります。何らかの事件に巻き込まれたのではないかと素人目には考え警察にお越しいただいたのですが、警察の方の見解はある意味、極めて明快でした。「全身に傷はありますが、これが死因ではありません(死に至る傷ではない)。ですから、病死としていい(事件性はない)と思います。」・・・・・・、以上、捜査は終了しました。こう言っては何ですが、私も警察にもっとちゃんと調べてくれなんてワザワザ言うことはありませんでした。私としては、警察に連絡したことで責任は果したわけで、その結果についてまで関わることはできません。それにしても、死因でないのと事件性がないのは別問題だと思うのは私だけなんでしょうか・・・。なんとなく、ワザワザ事件にしたくないという意図を感じずにはいられませんでした。
 
 そんなことを考えると、今回の栃木の事件のように、父親の話だけでは事件かどうかわからないようなものまで、なぜ捜査しなければならないのかと警察が考えるのは、むしろごく自然??なのかも知れません。事件性を訴える父に対して警察は、「勝手に事件を創るな!」と怒っていたに違いありません。何もしなくても事件は起こるかもしれないのに、さらにめんどうくさい事件を勝手に創られたらたまらないわけですから・・・。
 
 ぞくに、警察は民事不介入の原則があるといわれますが、最近の警察の諸問題を考えると、私はこの言葉に非常に違和感を覚えます。どちらかというと、仕事をしたくない言い訳が、民事不介入という言葉のような気がしてなりません。基本的には、民事不介入ではなく、民事中立というのが本来の原則でしょう。案件によっては介入しなければ、事件性があるのかないのか、わからないはずですから、原則、不介入は怠慢以外の何ものでもないでしょう。しかし、一方から言われた訴えを鵜呑みにして、相手方を悪者や犯人扱いすることは、介入前にあってはなりません。そんな中立は保たなければならないというのが民事中立(私の造語ですのであしからず)という原則です。警察の方々は、”捜査をせずして”民事不介入という言葉を発することは、怠惰、怠慢以外の何ものでもないということを肝に銘ずるべきで、おもいきって禁語にしてもいいくらいだと私は考えます。

 「めんどうくさい」は、なにも警察を罵倒するために使った言葉ではありません。私だって同じ気持ちだからこそ、反省を込めてこのエントリーとしました。やぶ医者だって、給料が同じなら、患者さんが来ないほうが、いろいろと症状を訴えない方が、簡単でお徳なのです。今、身内に病人がいて、患者側として病院を見ていますが、親身になって対応してくれる医者、看護士なんて、なかなかいないものだとつくづく感じています。こちらの訴えにめんどうくさそうに対応される(あるいは何もしてくれない)ことがなんと多いことか。ということは、私自身、今までのやぶ医者人生、患者本位であれたかどうかは、実に怪しいということを改めてしみじみ感じています。 

 そんなことで、警察と自分自身に活を入れさせていただきました。人の振り見て我振りなおせ、相変わらず被害妄想系、自虐系のエントリーでした。

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コメント

 この事件の報道は見ていないのですが、章の介さんの記事を読む限り公務員の処分規定の中にある「信用失墜行為」で懲戒免職なり分限免職なりが警察官に適用されても良いケースではないかと思います。
 「勝手に事件を創るな!」と言うのも、刑事警察だからでしょうね。国民の生活に殆ど関係のない警備・公安警察では事件を作るのが仕事としか言い様がないくらい、でっち上げ逮捕や微罪逮捕が行われていますから。私のブログで三月に沢山記事を書いた法政大学での弾圧事件などは法政の学生が学生証を示しながら大学構内に入ったのに「不法侵入」、立て看板撤去の様子を離れて撮影していたのが「威力業務妨害」で逮捕なんですから。尤もさすがに公判維持が出来ないと見て不起訴釈放でしたけれど。

投稿: アッテンボロー | 2006/04/15 23:39

アッテンボロー様、コメントありがとうございます。
 結果論として、一人の青年が殺されたことを、警察はどう感じているのでしょうか。何の捜査もせず、この結果で罪を感じないとしたら、人間じゃないような気もします。
 公安はまた別かもしれませんね。逆に、取締りのためには何でもやるでしょう。権力が何を考え、どう行使しようとしているのか(何も考えてないのか)がよくわかるというものです。

投稿: 彰の介 | 2006/04/16 22:17

栃木リンチ殺人事件で、
被害者のご遺族に
嫌がらせの手紙が届いていることが
明らかになりました↓。
http://imadegawa.exblog.jp/1932470/

『読売新聞』以外の全国紙では、
この件は報道されて下りません。

よろしければこちらのブログでも、
本件を取り上げていただけないでしょうか。

突然の書き込み、
大変失礼いたしました。

投稿: 今出川通信 | 2006/04/28 04:08

今出川通信様、コメントありがとうございます。
記事拝見いたしました。世の中、ひどいやからがいるものですね。税金泥棒は、警察の方だということがわからんですかね?。困ったものです。

投稿: 彰の介 | 2006/04/29 08:11

はじめまして「警察 怠慢」でたどりつきました。

 身の回りの例では

「同じ家への、同じ手口の空き巣」
=4年間未解決
 空き巣が累犯なのは一般の市民でも知っているレベル。
 そんなもので、同じ家へ2度・同じ手口でも4年間解決できずです。

「強姦未遂」(同期の女の子が被害に)
警官は最初は「…はい」「…そうですか」
反応の悪さにあきらめずに主張しつづけたら
「その時どうされたか詳しく言ってもらうことになりますよ」
そのあと
服を凝視されたということです。
(仕事しないは、セカンドレイプみたいなことするは)

「財布の窃盗(置き引き)」
最近わたしが被害にあったのですが、盗まれてるのに、遺失物ですませようとする。
その過程で警官が「24時間以上経って出てきた場合は所有権が放棄になるんですよ」という主旨の発言。
その根拠としてある書類を見せてくるがそれは落し物を「拾った」人が「お礼についての権利を放棄する」と宣言するための書類。

こんな状況ですよ。体験させられました。
埼玉の例のストーカー殺人事件の場合も警察は「いったん届け出を引っ込めてもあとでもう1回出せば認められるから、今は引っ込めてはどうか」というウソをついてましたよね。
パターンとしてはまるでいっしょです。あいかわらず同じごまかしの手法をとりつづけています。

(警視庁上野署きちんと仕事しなさいよ)

投稿: 岸辺 | 2006/06/09 06:37

岸辺様、コメントありがとうございます。
いろいろありますね。基本的に事件にしたくないという努力には、頭が下がる思いです(笑)。
今後の警察には普通に仕事をこなしてもらうことを願うばかりですね。

投稿: 彰の介 | 2006/06/09 07:51

レスありがとうございました。
他のエントリーも拝見しました。
最近の女児水死?についてのワイドショー報道、NHK民放から**年間受信料未徴収、などおっしゃるように責任はとらなくてすむように オ ト ナ な やりかた(女児水死?で鬼母情報をかなり前からじつは準備しているなど)をしても本当はバレますよね(笑)

また「ネットの実名化」のエントリーも拝見しましたが、役所が市民にこれを要求するなら、現場の警察官全員にいつも名札つけてもらうことにしましょうよ。
一私人がネットになにか書きこむなんかよりよっぽど重要なことですから。
(そういえばHPやブログへのカウンター設置は禁断の実です。私も経験あります(笑))

投稿: 岸辺 | 2006/06/14 07:16

岸辺様、コメントありがとうございます。
いろいろと私の駄文をお読みいただき誠にありがとうございます。
民放のバレバレ報道は、もう度を越えています。言いたくてしょうがないというのが本当にバレバレで、こちらの方がハラハラしてしまうほどです。本当に困りますね・・・。また、当ブログをよろしくお願いいたします。

投稿: 彰の介 | 2006/06/15 00:06

警察もお役所なんですね。じつは先日、悪質な詐欺に引っ掛かりました。で、警察に相談すると、『限りなくクロの会社ですね。しかし詐欺は証拠集めが難しいので、自分で証拠を探してもって来て下さい。』と言われました。…警察って捜査権がナイんでしたっけ?。だから 、数年前に殺人事件が発生しているけど、未だに犯人は捕まっていないのも当たり前なのかもしれません。遺族はたまらんでしょうけど。今の警察に期待する方が悪いのかもしれません。

投稿: カメ | 2007/09/15 02:06

カメさま、コメントありがとうございます。
いやー、警察の方が悪質な詐欺みたいな話ですね。捜査権の放棄ですね。状況を詳しく教えてほしいという話であれば納得ですが、証拠をもってこいとは本末転倒というかなんというか、まさにそれなら「警察いらん」ですね。

投稿: 彰の介 | 2007/09/15 18:47

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