メジャーマイナー論と報道のセンス
[ゴーログ]モテない報道の時代は来るのか?で、「時を考える」さんの何で勝った人を褒めないの?という記事が紹介されています。先日の高校総体で、卓球の愛ちゃんが負けちゃったという報道がされたのですが、勝った相手の宇土さんが全く相手にされていないと言う話です。これは、私が勝手に提唱する「メジャーマイナー論」の一端と考えていいでしょうか?(メジャーマイナー論についてはぜひリンク先の元記事をどうぞ)。
メジャーマイナー論の説明を、前の記事から簡単に抜粋して整理すると、
多くの人から応援されたり勝って欲しいと思われる人やチームをメジャー、逆にメジャーの引き立て役になったり、負けて欲しいと思われる人やチームをマイナーと呼ぶ。時にマイナーというのは不当に悪役にされたり、報道されたりするので、その救済がメジャーマイナー論の1つの主旨であり、また、人間というものは常にマイナーへ落とされる可能性があり、その精神論を唱えるのも、メジャーマイナー論である。(マイナーへの考え方であり、メジャーにケチをつけるのが主旨ではない)ちょっとパターンは違うかもしれませんが、上記愛ちゃんのニュースで言えば、愛ちゃんがメジャー、宇土さんがマイナーであり、愛ちゃんに勝ってみごと優勝したのにもかかわらず、愛ちゃんが負けたことをより強調するための引き立て役にされただけで、たたえられるわけでもなんでもないということです。勝手に想像するに、次回この両者が対戦すれば、より愛ちゃんがメジャー、宇土さんがマイナー化されて報道されるでしょう。リベンジして愛ちゃんが勝ったりすれば、まさに仇を討ったような話になってしまうことは想像に難くありません。勝っても負けても、引き立て役に過ぎない、そんな役柄を作り出してしまう報道というのはどうなんでしょうね。それとも、報道が悪いというより、メジャーをより引きたてる報道を欲している、我々の側に問題があるのでしょうか。
ところで、先日の高校野球では、日本中に大ブームを起こした?人物が現れました。もちろんその人は、ハンカチ王子こと早実の斎藤佑樹投手です。その端正なマスクに溢れる汗を、ハンカチで拭う姿がとてもかわいいという話ばかりでなく、歴代の大投手ともひけをとらないその活躍に、彼は連日ワイドショーで取り上げられることになりました。
その活躍や、彼の甘いマスクを嫉妬こそすれ(笑)、否定するつもりは全くありませんが、メジャーマイナー論的には、彼への報道というものは、実に危ういものだったと感じています。要するに、彼は事実上メジャー化してしまったわけですが、彼の人気をあおればあおるほど、相手の駒大苫小牧高校や、そのエース田中投手がマイナー化するという現実があったということです。まあ、双方の活躍をたたえるということで、ぎりぎり、ひどいメジャーマイナー化は抑えられたかも・・とは思っていますが、そんな危機感が報道にあったかどうかは疑問の残るところです。特に、斎藤投手がワイドショーに取り上げられたのが、決勝戦当日の朝、さらに、引き分け再試合となったその当日の朝であったことは、その危機感のなさ、報道のセンスのなさを非常によく表していると考えます。互いに全力を尽くして戦おうとしているその当日に、斎藤投手のいとこからハンカチの出所を聞き出したり、同級生に斎藤投手がどんな少年だったかを聞き出すインタビューを報道するなんて、危機感もセンスも何もないと考えるのは私だけなのでしょうか。いずれにしても、駒大苫小牧高校および田中投手が、早実および斎藤投手の引き立て役になりかけた事実は、メジャーマイナー論的に見逃すわけにはいかないのです。
しかし恐ろしいのは、ハンカチ王子というメジャーが現れたからこそ駒大がマイナー化したわけですが、一歩間違えば、駒大がメジャー化し、相手チームがマイナー化したかもしれないということを考えなくてはなりません。特に今大会では、駒大が「甲子園夏三連覇」という大偉業を抱えていましたし、さらに春の選抜を不祥事で辞退していましたから、「そのつらさを乗り越えた」な~んてことを大々的に報道すれば、優勝してもしなくても、相手チームがただの引き立て役につくりあげられた可能性は十分にあったと考えられます。
まあ、偏屈な私が、そんななかったことまで心配してしまって、報道の皆さんには申し訳ありませんが(笑)、残念ながら、現在の報道にメジャーマイナー論的視点はほとんどなく、話題性や視聴率が上がればいいというのが現実でしょう。「自分が負けると、世間が喜ぶ」というマイナー化は、勝負師であれば乗り越えなくてはならないものかもしれませんが、しかし、自分達がメジャーやマイナーを創り出しているという危機感を、報道には常に持ち続けていただきたいと考えている、偏屈男の彰の介でした。
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