牛肉コロッケとお薬
世の中に、牛肉と信じられていた混ぜ肉が出回っていた、いわゆる「ミートホープ事件」。私の個人的な感想は、肉を扱う専門家が、そのことに気付かなかったのか?という疑問と、牛肉と豚肉の区別もつかない消費者を批判した社長の発言は、実は本音中の本音なのではないかと思えてならないことです。要するに、騙すことより騙されるほうが悪いという理論ですが、あまりに簡単に騙されたことで、その罪の意識も低くなっていったのかも知れません。まあ、言い訳にもならない話ですが、偽装を見抜こうともしなかった管轄の行政府はもう少し非難されてもいい話のような気がします。
これを我々の世界に置き換えると恐ろしいことになります。私は職業柄やぶ医者をやっていますが、先日点滴用の、ある薬を生理食塩水に溶かしながら、ふと頭によぎったのが「この薬、ただの水だったらどうしよう」ということです。薬の中身を確認するすべは全くありません。我々は、ラベルに書いてある薬の名前を、その薬であると信じ切って使っているに過ぎず、それこそラベルの貼り間違いでもあれば一発アウトです。
薬に関して、業者が偽装し始めたらとんでもないことになります。生理的食塩水は0.9%の食塩水ですが、はっきりいって0.8%でも0.7%でも、害はほとんどないと思われます。入れる塩をケチれば利益につながる・・・、しかし、特に医者からは問題視されない、患者にも不利益はない・・・となれば、そんな偽装が行われるかもしれません。風邪薬の類であれば、どうせ数日で治るのですから、小麦粉混ぜたって、害は少ないかもしれません。やってみて、なにも文句が来なければ、そのまま薬として世に出され続けるかもしれないのです。
末端の我々や、実際薬を投与される患者にその確認をさせるのは不可能なわけですから、やはりそこは行政府にしっかり監視をしてもらうしか手がないように思います。現在、例えばジェネリックなどがもてはやされ、要するに安い薬の方がいいという風潮がありますが、「成分が同じで価格が安い」といううたい文句が、絶対という補償はありません。実際私は、患者さんにジェネリックを処方したとたんに病態が悪化し、元の薬に戻した経験があります。
私はむしろジェネリック推進派ですが、価格が安い→儲けが少ない→コストダウンが必要→ちょっと中身の薬をケチる→安い薬だとアピールする・・・な~んていう業者が現れない補償はありません。業者を信じることはもちろん大切でしょうが、国が国としてジェネリックを推進するのであれば、我々が安心してジェネリックを出せるような、しっかりした監視をし、結果を報告していくようなわかりやすい制度をしていっていただきたいと願うばかりです。まあもちろん、ジェネリック以外の大手の薬も同様ですが・・・。
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コメント
表示の正しさがある程度担保されている社会かどうかで、その社会に属する人々の生きるコストが激変するんでしょうね。
中国の食品問題も、防犯と治安の問題もそうですが、社会でそれが担保されているうちは必要ない対策が、少数のばか者の出現で求められるようになります。
そして、一旦おかしくなると不信や不安を取り除くのは大変です。
なかでも食とか医療はそれが顕著ですから、予防にある程度社会的コスト(罰則なども含めて)をかけておく必要があるのだと思います。
ちなみに、私もジェネリックを推進するように市の国保担当者に働きかけています。そして、同じような不安を感じることはあります。
投稿: takeyan | 2007/07/14 13:07
takeyan様、コメントありがとうございます。
確かに、ほんの一握りの人間がど悪いことをして、結局高コストになってしまうのですね。私も薬のことで不安など持ちたくはないのですが、こうあちこちでとんでもないことがおきてくると、まさか我々の世界でも・・・とかんぐりたくなってしまいました。
投稿: 彰の介 | 2007/07/14 23:57