医師という職業選択
最近、小児科あるいは産婦人科の医師が少なく、病院から産科、小児科などが撤退しているということが大きく問題視されています。そもそも、産科小児科の医師が少なくなっている理由は、今後少子化社会となり、食い扶持が減ると宣伝されたこと、また、訴訟リスクが高いことなどが上げられています。
そこで、解決策の1つとして産科や小児科の診療報酬を上げてはどうかという議論がされているようです。そうすれば収入が上がって、やり手も増えるという目論見ですが、まあ、何も変わらないでしょうね。
私は職業柄やぶ医者をやっていますが、そんな私が何も変わらないと思うのは、多くの総合病院で、基本的に医師の給料は年功性であるという点です。医学部の卒後何年ということで給料が決まるわけです。当然ですが、公立病院では年功以外に差はありません。つまり、科による、あるいは働きによる給料差というのはないわけです。内科の医師も、婦人科の医師も、眼科も、皮膚科も全ての医師が同じ給料をもらうことになります。もちろん、忙しい科は、当直料や時間外手当などがついて多少報酬が違うということはありますが、正直、身を削って金を稼いでいるという感覚が拭えません。
だとすると、当然、自分が将来進む科の選択に「忙しさ」というものが加味されるのは言うまでもありません。小児科は地獄だ、産科に入ると死ぬ思いをする等とさんざん言われ、特別給料が高いわけでもなんでもないとなれば、ごく自然になり手が少なくなるのは当たり前だと思います。
ただ、人間というものは、仕事を選ぶ時、給料だけを問題にして選ぶわけではありません。いくら給料が高くても、自分の嫌な分野には進みたくないでしょう。一方、給料のことなど関係なく、自分がやりたいと思う分野には誇りを持って仕事に向かうのではないでしょうか。私も内科のある一分野の専門医の資格を取りましたが、その分野において、他の先生ができない診断をし、治療をし、そして患者さんから「よくなりました、ありがとうございました」といわれれば、本当にうれしく、やりがいがもてるというものです。はっきり言って、そこに給料は全く関係ありません。
漠然と私が思うのは、特にバブル期以降、不況で職に就けない人が多くなった時、職業として、くいっぱくれがないといわれる、「医師」になろうと医学部に入学した学生が多くなったように感じることです。もともと、医師になろうと思ってなったわけでなく、お金を稼ぐための医師になろうという感じです。もちろん、そんな人間が、以前にはいなかったわけでもなく、最近の若手医師の全てがやる気無しというわけではありません。が、以前は自分が進む科を選ぶ時に、「こんな手術がしたい」とか「この手技を習得したい」とか、実家が小児科で開業しているから小児科になろうとか、最悪前向きな進路選びがされていたと思うのですが、このところ、「どの科が楽で、儲かるだろう」という選択肢が出てきたということを感ぜずにはおれません。
医師というのは、本当に仕事量と給料が比例しません(やぶ医者の給料)。ほとんど仕事が無いのに、法的にどうしても医師がいなくてはならない施設などは、かなりの大金で医師を募集しています。コンタクトレンズ会社併設の眼科などは、下手をすると眼科とは全く関係ない医師が診療している場合もあるようですが、これがまたお給金が高いらしいんですね。つまり、自分の技量がなくても、お金だけを目的に生きていける環境があるわけで、しかもそのことに、何も疑問を覚えない医師が増えているとすれば、相対的に医師不足になっていくというのもわかる気がします。
私はそのあたりに、問題意識があるのですが、残念ながら医学部に入るためには、そのあたりの意識を計り知ることはできません。まあ、制度を少しひねった位で、解決できるような問題ではなさそうですが・・・。
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