日本医師会のCMに物申す
最近、日本医師会がテレビCMを流しています。いずれリンク切れするかもしれませんが、見たことがない方はこのあたりのページをご覧ください。
私は、職業柄やぶ医者をやっていますが、日本医師会の会員ではありません。健康保険の関係で、無理やり加入させられていた時期はありますが、別に強制加入団体ではないわけです。やぶ医者だから退会させられたわけでもありません(笑)。
ところで、流されているCMの内容といえば、以前は、「夜間発熱した子供を抱えたお母さんが受け入れ病院がなくて困っている様子」、現在は、「勤務医が過労死レベルの仕事をこなしている」男性医師編と、「妊婦の産婦人科医が、妊婦さんにがんばれと励ます」女性医師編になっています。
しかし、このCMには、なんとなく釈然としないものを感じています。日本医師会は、ひとごとのようにこのようなCMを流していていいのだろうかという疑問がわきあがってくるからです。
まずは、このナレーションですが・・・
医療の現場を守るため、
国にさまざまな提言をしています
まず第一に、基本的に日本医師会は開業医優位の団体であることです。その日本医師会が、勤務医が大変で医療崩壊が起きているとCMで訴えているわけですが、開業医の団体であれば、当然「勤務医の激務を開業医がしっかり支えていきます」と宣言すべきではないでしょうか。にもかかわらずなぜ、「国に提言しています」なのでしょうか。
非常に勘ぐったものの見方をすれば・・・、大病院の夜間救急などが疲弊すると、開業医がその代わりの負担を求められることになります。おそらくそういった負担増や(勤務医より楽とされる)開業医への風当たりが悪くならないように、「勤務医さんのことも考えてますよ」というアピールをしているにすぎないのではないかと、一やぶ勤務医の私は勘ぐっているわけです。
もちろん、開業医の先生方は(地域差はあるかと思いますが)当番制で夜間救急などを行っておられますし、また、開業医の先生によっては、勤務医以上の24時間体制で、疲弊しきっている先生がおられることも知っています。しかし、一やぶ勤務医の私に、 そんな風に勘ぐられること自体がこのCMの問題であり、勘ぐるほうが悪いといわれる筋合いはありません。まず医師会自身が何をするべきか提言すべきで、ひとごとのように、国に提言するでは納得がいきません。
さらにこんな文字がCMに映し出されますが・・・
医師たちは闘っている。
医師不足という
もう一つの大きな病と。
これも大きな違和感があります。はっきりいって、私が医学部に入学した10数年以上前から、我々医学生が何を聞かされていたかといえば、
君たちは、これから医師過剰時代を生きていくことになります。イタリアと同じように、タクシー運転手をしながら医者をやっていく時代になるかもしれません。
なんていう話です。要は、医師の食い扶持はどんどんなくなっていくというという話であり、食い扶持確保のため、医学部定員を抑制してきたこと、さらには、女性を多く入学させる(女性は結婚などで休職したりやめる可能性も高い)という裏技まで聞かされていました。
この医師養成の抑制は、医師が増えれば、医療費がかさむという国の政策だと思われがちですが、もちろんその側面はあるにせよ、基本的に医師による医師過剰時代を見据えた防衛策の面もあったことは間違いありません。現在私は、その働きかけを日本医師会がしていたという証拠を持ち合わせていませんが、最低限、医師会が医師過剰時代が来るという認識があったことは間違いないと思っています。
したがって、医師不足という病を作り上げたのは、国でもあり、数年前の医療制度の改正でもありますが、医師自身が招いたものであることもまぎれのない事実だと思うわけです。したがって、今更、ひとごとのように、医師不足という病と闘うも何もないでしょう。恥ずかしいからこんなCM流すのはやめてもらいたいと願うばかりです。
そんなわけで、私の思いは書かせていただきました。私の認識の誤りは数多くあるかと思いますのであまんじてご批判はお受けいたします。
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コメント
今晩は。はじめまして。
日本医師会のCMについて調べようと
して、貴サイトを拝見しました。
おなじCMなのかわかりませんが、勤
務医が子どもの運動会にいけない云々
というものです。
日本医師会というのは、まだ、日本国
民の血税を欲しい団体なのでしょう
か。自治医科大学など必要だったので
しょうか。医師と係わりがない自分で
も疑問だらけです。
もっと、日本医師会内部で自浄努力で
日本の医師を立ち直らせられないので
しょうか。はっきり言って、日本の医
師全体が信用できないと言わしめるこ
とになるかもしれません。
開業医も地域の有床病院にかかりつけ
医としての登録義務で、昼間夜間問わ
ないで勤務するなどの具体策があって
もいいのではないかと考えるのです
が。有床病院の医師が夜間勤務のため
に月に何度か昼間は地域の開業医に御
願いしてもいいのではないかと思いま
す。月に一度か二度なら、地域の医師
同士を守る為なら出来ないことではな
いのでしょうか。
とにかく、自分のような素人に意見さ
れるような医師の自浄も考えもないの
であれば、日本の医師は終わりです。
投稿: 高橋 | 2009/05/17 21:48
高橋様、コメントありがとうございます。
現在の医療体制はいろいろと問題を抱えておりまして、なかなか一点からの改革は難しい状況です。多くの医師が疲弊していることは事実で、ただ、働けと言うだけでは解決にはなりません。むしろ大反発を生むだけです。
最近のエントリーにも書いたのですが、(私のように)医療側から現在の医療を批判するのは基本的に売国奴的行為でして(笑)、それ自体が批判の対象となっています。ましてや、高橋様はじめ一般の方々の批判は、「現状を知らない、マスコミに踊らされている」などと一蹴されてしまいます。そんな意味で言えば、今のところ医師会が自ら売国奴と化して改革する意思がないのは明らかだと思います。疲弊しているところに鞭を打つことはできないと言うのが半分、単純に仕事を増やすための団体でないと言うのが半分でしょう。
私は、医療の視点から、患者の視点から、行政の視点から、その他もろもろも視点からの改革やアイデアが必要と思っています。医師の視点だけでは、改善できません。ですが、医療に身を置くものとして、微力ながら問題発信を続けたいと考えています。
投稿: 彰の介 | 2009/05/18 09:35
先ほど、日本医師会のCMなるものを初めて見ました。私は医療関係者ではないので詳しいことは分かりませんが、かの団体の主張・提言なるものには大変違和感を感じました。といいますか、政権与党から外れてしまったことに対する「焦り」を感じさせる内容だったように思います。正直言って、CMでアピールしているような内容は、自民党政権時にやる気になればやれたのではないかと思えてなりません。
激務に激務を重ねられている勤務医の方には同情を禁じえませんが、開業医マンセーの日本医師会が今更ながらにこのような子供だましのCMを流すことは腹立たしくもありますね。
投稿: roberto | 2009/12/13 20:35
roberto様、コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、やろうと思えばいつでもできたことが多いと思いますし、いまさら人ごとのようにというのもどうかと思います。
私も、人の批判ばかりでなく、もっと働かないといけませんが・・・。
投稿: 彰の介 | 2009/12/14 19:00
思いがけず、見入ってしまう内容でした。
日本医師会選で三人の候補者が事務所の立ち上げなどに大勢の取り巻きの手をかりて奮闘している今日この頃…。
2006年9月に最愛の人が逝きました。
彼も外科の勤務医でした。
脳出血を発症後、2年間のリハビリを行い整形の医師として臨床に復帰した1年後。
くも膜下出血を発症し…。
彼も、疲弊していました。自ら患者でありながら、医者として生きよう決めた矢先のことでした。
「日本医師会選を「自民と民主の代理戦争」という人も少ないないと聞きます。たしかに改革は急務です。
ただ、澱みをかきまわしても、透明にはなりません。命を守るの医者であれば、その医者を守れるものは何なのでしょう…?同じ志を持つものが、助け合えないようでは人としての不安が付きまといます。
投稿: つくし | 2010/02/28 00:24
つくし様、コメントありがとうございます。
最愛の外科医の方の件、心にしみました。ご冥福をお祈りいたします。自分自身、たぶん同じ勤務医でありながら、脳出血を起こすほどは働いていないと思っていますので、漠然とではありますが、責任を感じます。
そんな自分は棚に上げて、医師会にものが言いたいのは、結局医師会も圧力団体であり、自分たちが楽になることを政治とつるんでやってきた面があると思うことです(すべてではないでしょうが)。そのしわ寄せの一端が、勤務医の激務につながっていることをどう考えているのかが知りたいと思うわけわけなんですね。
批判は簡単ですが、今自分にできることは何かと自問すると、なかなか答えは出てきません。まあ、目の前の仕事を淡々とこなすしかありませんか。
投稿: 彰の介 | 2010/03/02 12:03