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2009/03/19

新研修医受難の季節

 ついこないだ紅白歌合戦を見たと思ったら、もう3月も半ばを過ぎました。もうすぐ桜舞う4月ですね。
 私は職業柄やぶ医者をやっていますが、我々医療界において、4月というのは特別な月でもあります。それは患者様にとっても特別な月なのですが。

 4月、それは年度の始まり、フレッシュマンが仕事を開始する月です。もちろん、病院も同じ、つまり、医者に限っていえば、新しい研修医の先生方が働き始めるわけです。いいですね。ういういしいですね。

 今をさかのぼること10数年前、当時は医師国家試験の関係で5月の連休明けでしたが、医学部を卒業したばかりの私も期待に胸を膨らませ、医者という仕事を開始しました・・・・。

 期待に胸を膨らませ???、もちろんうそです。不安な気持ちでいっぱいの中、仕事を開始したのは言うまでもありません。医師国家試験に合格したことと、すぐに医者として働けるかどうかということは、まったく別問題であり、はっきりいって、国家試験に合格したとしても、風邪薬の名前すらわからないのですから。

 私の場合、就職2日目に当直がありましたが、まあ、なんというか、しどろもどろだったことはいうまでもありません。患者さんから話を聞くのが精一杯で、投薬検査その他は上級医に相談することになるわけです。

 しかしまあ、この時期、研修医が何もできないことを知っていながら、上級医というのはここぞとばかりに、上級医ぶる悪い癖がでて研修医を困らせるわけです。

「はあ?そんなこと聞くの?基本からなってないね!。」

「点滴やってよ。はあ?点滴すらできないの?何もできないんだね・・・。」

 だから基本どころか風邪薬の名前すら知らないんです。点滴?できるわけないんです。学生時代に医療行為なんかやれるわけないんですから。しかし、上級医にもいろいろあって、面倒見のいい今の私のような(←強調)上級医もいれば、仕事嫌いの癖に下っ端に冷たい上級医もいて、当直などでは、上級医のあたりはずれが運命を左右することになるんですね。

 ただ、この時期、研修医を狙っているもう一種類の天敵が存在しています。それは・・・看護士の皆様・・・。基本的に、看護士さんというのは、医者の命令で動くシステムになっているわけで、まあこういうと語弊がありますが、当然医者のほうが看護士より偉いという関係にあります(簡単に言えばです)。しかし、フレッシュな研修医より、明らかに経験をつんだ看護士さんのほうが仕事をこなせるわけで、この時期、研修医はここぞとばかりに看護士の皆様の餌食になるんですね。

「先生、早く診察してください、患者さんが待ってます!!」

「え!こんな治療するんですか?ちゃんと上の先生に確認してください!!」

「この方にこんな検査必要なんですか??」

 うむむ、思い出すとなぜか胸がどきどき、冷や汗が出てくるのはなぜなんでしょう?。上記、要するに、いじめで言ってるだけですが(笑)、研修医としては、まったく反論するだけの力を持ち合わせないため、ぐっとこらえるしかないんですね。仕事ができるようになっていけば、自然と皆さん優しくなっていくものです。数人の例外を除いては・・・。

 そんなわけで、患者の立場になった場合も、この時期研修医の先生に診察してもらったり、注射してもらうようなことがあるかもしれません。
 私の立場上、患者様に置かれましては、寛大なる御心をもってして、研修医の治療を受けていただけませんでしょうかとお願いするしかありません。その道を通らなければ、まともな医者にならないのですから。
 
 いや、現在、医師不足が叫ばれる中、研修医の確保のために、あるいは研修医の医療行為による患者様からの苦情をなくすために、実に研修医に甘い病院も出現しています。基本的に研修医に医療行為をさせない、5時には帰宅、休日は出勤しないなど、医者として大丈夫かと思うようなことまで許しているところがあります。が、結果として、働かない、いつまでたっても基本手技が上達しないなどの問題があって、百害あって一利なしというのが私の考えです。だからこそ、患者様の御心におすがりするしかありません・・・。

 ということで、緊張のあまり、食事もまともに喉を通らなかった「あのころを」を思い出した私です。初心忘れるべからずと言いますが、忘れたい思い出です・・・。

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