トキ襲われる!
自然大好きな私に、衝撃的なニュースが飛び込んできました(佐渡のトキ8羽死亡 2羽瀕死、外敵が襲撃か、トキ襲ったのは「テン」 天井付近から侵入か)。2つめのニュースを抜粋しますと、
佐渡トキ保護センター(新潟県佐渡市)の野生復帰ステーション順化ケージで、放鳥に向け訓練中だったトキ9羽が死に、1羽が負傷した問題で、環境省は11日、トキを襲った小動物がテンと判明したと発表した。雪の上に残された足跡から分かった。センターの金子良則獣医師によると、ケージの天井付近に侵入したような跡があり、ここから入った可能性が高い。
私の場合、もし今のやぶ医者という職業に就いていなかったとしたら、何かしら自然に関わる仕事がしたかったと思っており、特に昨今では、コウノトリやトキの自然復帰プロジェクトに興味津々でした(コウノトリの郷と彰の介の愚)。しかしよりにもよって、自然保護の象徴の一つである「トキ」を9羽も一度に失うとは、保護センターとしても大失態と言わざるを得ないでしょう。テンもテンです。何もトキを襲わなくても・・・・・・。
しかし、この話を聞いて不思議に思う点が2つあります。
一つは、この襲われたトキが、小さな鳥小屋にぎゅうぎゅう詰めにされていたわけではなく、順化ゲージという、ゆうゆう飛べる大きさのある建物の中で飼われていたことです。つまり、たとえ襲われたとしても、十分逃げるスペースがあるに違いないと思うのですが、10羽ほぼ全滅というありさまです。たとえ夜の寝込みを襲われたとはいえ、ちょっと納得がいきません。考えられるのは、所詮人間が育てたトキというのは、警戒心の弱い温室育ちということでしょうか。逃げるという本能を忘れてしまっているのかもしれません。ただ、放鳥されたトキの中で、何かに襲われたという話は一羽しか聞いていませんから、そんな野暮トキばかりではないかもしれませんが。
あるいは、今回襲ったテンが、「ガンバの冒険」にでてくるノロイ級の殺し屋だったのでしょうか。ちなみにノロイはテンではなくて白イタチ(アルビノ?)ですが・・・。
もう一つの疑問は、テンが何のためにトキを殺したか?ということです。トキを食べようとして殺したとするならば、1羽殺せば十分なはずです。10羽も襲う必要はありません。しかも、前段につながりますが、順化ゲージという大きな建物の中で、すべてのトキを襲っているわけです。冒頭の記事によれば、何時間もかけてすべてのトキを襲っているようですから、襲う理由がわからないわけです。
あまり自然の動物に対して考えたくはないのですが、残念ながら、このテンは襲うのを楽しんでいたとしか考えられません。我々は、自然に対して理想を求めがちですが、そんな無駄な殺戮も自然の姿なのかもしれません。
ちなみに、私が住んでいた田舎では、よくイタチを目にしていました。さすがに、自然が激減した現在、イタチは絶滅してしまったでしょう。
私が父に聞いた話によると、むかし鶏小屋がよくこのイタチに襲われたようです。それも、今回のトキの話と同じように、鶏小屋の鶏すべて全滅してしまったようです。父曰く、
「あいつら(イタチ)は殺すのを楽しんでいる」
と言っていましたが、そんな言葉を聞いていたので、今回のテンも襲うのを楽しんでいたのかなあと想像するわけです。
ちなみに、「ガンバの冒険」の白イタチのノロイも、ただただ、ネズミたちを殺戮するのみで、食べるわけではありません。そんなイタチ族の性質を原作者はわかって作った作品なのかもしれません。
全く関係ないかもしれませんが、ノーベル賞学者ローレンツは、「ソロモンの指輪」の中で、平和のシンボルであるハトのむごい殺戮について書いています。(以下正確な記述ではないかもしれませんが)同じ鳥かごの中に2羽のハトを入れると、喧嘩が始まり、どちらかが死ぬまで喧嘩は終わらないというのです。勝者が敗者の羽をむしり取ってしまうというのですから、その残虐さは確かに平和的ではありません。普通自然界では、同種の強弱をつける喧嘩には、一定のルールがあり、勝者が敗者を殺すようなことは滅多に無いとされていますが、ハトのように、普通殺されそうになれば飛んで逃げればいい動物ではそんなルールはなく、鳥かごのような飛んでいけない環境に入れられてしまうと、とことん殺すまで相手をやっつけてしまうと言うのですね。
そう考えると、イタチ族は、「そこに獲物がある限り襲う」というのが本能なのかもしれません。広いとはいえ、順化ゲージも閉鎖空間ですから、そこに獲物のにおいがあるかぎり、とことん殺戮しないと気が済まないのかもしれません。まあ、人間としては、殺すことを「楽しんでいる」と解釈するよりは「本能である」と信じたいわけですが、そこは当のテンやイタチに聞いてみないとわかりませんね。聞く前に、例のテンの場合、見つかり次第死刑かもしれませんが・・・。
というわけで、トキの自然復帰プロジェクトに、大きな影響が出てしまうことは必死と思われます。今年こそ放鳥したトキが、自然に産卵子育てするのを期待したいと思いますが、ちゃんと自然界の怖さも、親鳥たちが教育してくれることを願いたいと思います。
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