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2013/08/23

新自由主義の段階的荒廃論 解説②-前編

 前回、新自由主義の萌芽、能力主義的新自由主義について解説させていただきました。ジャガイモの収穫の例を出させてもらいましたが、普通、収穫量に比例して給料を渡すのが普通だと感じてしまうのですが、現実の社会では、意外に成果に比例的ではない給与体系になっていると思われます。不思議ですね。この能力主義的な考え方は、新自由主義的な考え方を、ごく普通の人が、普通に受け入れてしまう下地になっているのですが、新自由主義者がそのベールを脱ぎ、姿を見せ始めても、それに気付かないという問題を生じさせてしまいます。

 前回は、自身が地主になったつもりで考えたのですが、わかりやすく、今度は自前の土地でジャガイモを作る話を考えてみます。再度確認ですが、正確には経済学的に誤りがあるかもしれません。細かいところについてはご勘弁願います。例によって、AさんとBさんが同じ広さの土地を所有しているのですが、優秀なAさんは1500個、ダメなBさんは500個の収穫をあげています。

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 ここでわかりやすく、一つの仮定を掲げてみます。「農家の所有する土地は、広げてはならない」という規制があるとしましょう。他人の土地を買い上げてもいけないし、新しい土地を開拓してもいけないわけです。なぜそんな規制があるかといえば、それは、総理大臣の彰の介が、Bさんたちと結託し、それほど努力しなくても農家が食っていけるように、法律を定めたからです(仮定ですからね!)。Aさんのように、優秀な人間が出てきても、土地の広ささえ抑えておけば収穫量がある程度制限されますから、Bさんのようなダメ人間の収穫量でもやっていける環境が維持されるわけで、多くの農家が暮らしていけると、言い訳までに総理が考えたのでしょう(仮定ですからね!!)。

 Aさんはおもしろくありません。Aさんはやる気があって、努力できる人間なのです。もっと土地さえ広げられれば、より多くの収穫が見込め儲けることができるのです。しかも、やる気のない、努力しない人間が、のうのうとやっていける社会が許せません。「努力した者が報われる社会」をつくるためには、「規制緩和」「自由競争」が最も大事であると考えるに至り、大々的に世論に訴えるようになります。そしてやがて、世論に押され総理大臣彰の介が退陣、新しい総理の下、土地所有の規制が撤廃されることになりました(仮定ですからね!!!)。

 まあ、そんな状態を想定していただいて、めでたく規制が緩和され、Aさんが新たに開墾して、土地を1.5倍に広げたのが下の状態。収穫効率が変わらないとすると、よりたくさんのジャガイモが生産されるようになり、市民としては、より安いジャガイモがたくさん食べられるようになりました。Aさんも努力によって収入を増やすことができました。そして既得権益でのうのうと生きてきたBさんは、ジャガイモの価格の下落による収入減で、苦しい生活を送ることになります。めでたし、めでたし。

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 過去記事のとおり、こんな、優秀で能力があって努力できる人間で、その進まんとする道を塞ぐ規制や既得権益を排除すべきと考えるAさんのごとき人を、新自由主義的であると書いてきました。そして新自由原理主義とも呼べるようなこの段階を真性新自由主義と名付けました。この段階において、上記の文章通りだとすれば、Aさんに悪意がないのはもちろん、Aさん自身の努力が報われたこと、Bさんは自己責任で没落したという意味で、誰もそれが間違った改革であったとは考えません。

 しかし、実は、規制を緩和するということは、多くの人に門戸が開かれることに他なりませんから、周りに多くのライバルが出現することになります。ライバルはBさんだけではないのです。Aさんのように、優秀で能力があって努力できる人間は一人だけとは限りません。したがって、Aさんは規制緩和を訴えた張本人である以上、新たなライバルの出現によるより激しい競争を受け入れなくてはなりませんし、もちろん受け入れているのでしょう。私が重視するのはその考えを一貫して持ち続けているかどうかです。競争こそ全てであり、没落するのは自己責任とする考えで一貫している段階であれば、それを真性新自由主義と定義して、悪意のない段階と考える訳なのです。

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 さて、勝手にめでたしめでたしとしましたが、本当にめでたしなのかどうかについて、私はかなりの疑問を持っています。一見して、特に問題無いと思われるこの段階について、いろいろと後半で屁理屈をたれたいと思っています。

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