« 新自由主義の段階的荒廃論 解説②-後編 | トップページ | 新自由主義の群像-過去記事訂正 »

2013/10/07

新自由主義の段階的荒廃論 解説③

 前回、前々回と、真性新自由主義として、新自由主義が熟す瞬間と、一見悪意の無い状態から、徐々に、国家としての不利益を生み始める瞬間について考えてみました。

 私としては、新自由主義者が競争の激しい世界を志向し、その状態を常に保とうとするのであれば、問題はあっても、それはそれで筋が通っているとは思うのですが、実際に利益をつかめば、それを守ろうとするが人間というものです。それは、おそらく新自由主義者であっても同じだと考えています。

 例えば、新自由主義の段階的荒廃論 解説②-前編で出した図を再掲します。新自由主義としての筋を通すのであれば、どこまでも土地を広げ、どこまでも生産量を増やし、誰か一人が勝ち残る(様な状態)まで競争をしなくてはなりません。しかし、そこまで原理主義に突っ走ることはよほどでなければできないものです。

 9

 すなわち、今まで勝っていた時は、負けた者(負け組)は自己責任だから仕方がないと考えてきたにもかかわらず、今度は自分が負け組に回るかもしれないと思った瞬間、これは正しい競争ではない、何かが間違っている・・・と考え始めるわけです。まさに、筋の通らない新自由主義の崩壊です。

 実際には、国家が、親のようにある程度の規制をかけ、過当競争を排除していくことになるのでしょう。競争をとことんまで突き詰めて、一人の勝者しか生まない場合、国家としての不利益ははかりしれません。ましてや現代のようなデフレ不況下の状況では、二極化して、多くの不幸な国民を生むだけであるのは、過去の記事に書いてきたとおりです。

 まあ、それはともかく・・・・、新自由主義者の本当の荒廃は別のところにあります。
 ある程度の成功を収め、世の有力者としての地位を確保した時、新自由主義者は、必ず自らの地位を確保することに全力を傾けるようになってしまいます。これは、前段で書いたとおり、新自由原理主義としての筋をいつの間にか通さなくなっているわけですが、さらに政治と結びついた場合は、いろいろと汚い手を繰り出すことになります。ここまで来ると、認識している、していないにかかわらず、悪意を感じざるを得ません・

 実際にはあり得ない一例を挙げましょう。
 ジャガイモ生産農家のAさんは、激しい競争に打ち勝ち、それ相応の生産量を誇ってきました。ところが、そこに、新興の勢力Yさんが現れました。Yさんは、独自の肥料「ハイポックスY」を開発し、どんどんと生産量を上げています。さすがのAさんも無視できない状況になってきました。
こんな時、政治家と結びついたAさんは、とんでもない政治活動を始めるわけです。
「ハイポックスYの使用制限を法律で定めよう」
「ハイポックスYは、正当で自由な競争を阻害している・・・」なんて言い始めるわけです。

 もう一つ、こちらはあり得そうと言うか、実際にある話を挙げてみましょう。
 ジャガイモ生産農家のAさんが、生産したジャガイモをJ国へ輸出しようとします。ところが、J国の法律には農薬の使用制限があり、Aさんが使用している農薬のせいで輸出できないというのです。ということで、Aさんはまたしても政治活動を始めます。
「J国は農薬の使用制限を撤廃すべきだ」
「農薬の使用制限は、正当で自由な貿易を阻害している・・・・」と・・・・。

 新自由主義も、行き着いてしまうとただの既得権益者です。自分が攻める立場であれば、相手方の、あるいは国内の正当な防御機能たる規制というものを「正当で自由な競争」を理由に徹底して攻撃するわけですが、逆に守る立場になった場合も、「正当で自由な競争」を盾に自分の利益を守ろうとすうわけです。しかも、時に、ハイポックスや農薬のこと並みにあり得ないような理由やいちゃもんの場合が少なくありません。これらは全くの矛盾であり、御都合主義としか言いようがありません。まさに、私が御都合主義的新自由主義と名付け、新自由主義のなれの果てと考えている段階がこの状態なのです。

 そう、新自由主義も、行き着けばただの既得権益者に成り下がるのです。成り下がって、消えていけばいいのですが、政治と結びついてより大きな影響力を持つと、ますます多くの人間に不利益をもたらします。新自由主義者はそもそも頭がいいですから、そうそう馬脚を現しません。むしろ「正当で自由な競争」と言われれば、むしろそれに納得してしまう人々も少なくないわけです。

 現在の日本は、国内からも、海外からも、新自由主義の大変な攻撃にさらされています。規制緩和とか、自由貿易とか、一見それらしい言葉で納得してしまっている日本人も少なくありませんが、多くの御都合主義者によって牛耳られてしまっていることには、なかなか気付かないものです。ここは、新平等主義的観念を導入し、バランスの取れた国家運営が必要だと考えますが、皆様はいかがお考えでしょうか。

 新自由主義について、自分なりに考察を進めて来ました。書いているうちにいろいろと気付いた点があり、少し過去記事の訂正を入れたいと思います。また、もっと昔の「彰の介の証言」の記事の中に、私こそが新自由主義に踊らされてきたということに気付いた文面があります。それも少し手直しさせてください。
さらに、新自由主義者列伝と歴史認識の問題までを、何とか今年中に書いていきたいと思います。

 人気blogランキングに登録しています。ぜひ清きクリックを!
 ↑↑クリック!
 BlogPeople「ニュース・一般」ブログランキングにも清きクリックを! ↑↑クリック!
 
 かなり前からツイッター始めています。よろしければfollowしてください。そんなにつぶやいていませんが。

|

« 新自由主義の段階的荒廃論 解説②-後編 | トップページ | 新自由主義の群像-過去記事訂正 »

コメント

しょうのすけさん、こんにちわ
べものをしてネットサーフィンしていましたら、こちらのブログ着きました
またうかがいまーす

投稿: ヨーコ | 2013/10/14 15:08

ヨーコ様、お久しぶりです。
私のしょぼい文章でよければ、また遊びに来て下さい。
しかし、どんなネットサーフィンをするとこのブログにたどり着くのでしょう・・・。へんなブログつながり???

投稿: 彰の介 | 2013/10/14 21:47

新自由主義とか、いろいろ検索していて
名前を見て、プロフをみて、『もしかしてしょうのすけさんかなあ!』、と思いました。
当たっていたみたい!!嬉しいです

また忘年会にでもお会いしたいですね!!

投稿: ヨーコ | 2013/10/16 09:08

 ヨーコ様コメントありがとうございます。
新自由主義で検索して、このブログが出るなんて、私もえらくなったものですね(笑)。

 ぜひ、このネタ+αで本作って下さい。・・・ウソです。残念ながらお金ありません・・。

 ということで、なかなか東京へ行く時間はございませんが、日程が合えばぜひお誘い下さい。

投稿: 彰の介 | 2013/10/16 22:36

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 新自由主義の段階的荒廃論 解説③:

« 新自由主義の段階的荒廃論 解説②-後編 | トップページ | 新自由主義の群像-過去記事訂正 »